80 一年の計は元旦にあり… 2

3時間掛けようやくお父様が住んでると思われる田舎にきた。
車は鳥栖インターチェンジから市街地へと降りた。その近辺に家があると思いきや田舎道へと移動。周りは田んぼやら畑やら山やら川やらと、十二分に田舎を満喫出来る景色が周っている。あのじいさんこんなクソ田舎に住んでたのか。
「ケイスケ、まだつかn、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
運転しているケイスケを見た瞬間、俺は血の気が引いた。
寝てる。
寝てやがる。
俺はケイスケの脇腹に拳を突き刺して起こす。
「ふひぃぃぃぃッ!!」
危うくトラックと正面衝突するところだった。
「おにぃさま…勘弁してくださいまし…」
ナツコも気付いてトラックと正面衝突しそうになっていたのを見てケイスケに指摘。
「寝てません、寝てません、ねてm…。Zzzz」
「うぉぉおい!」
再び俺の攻撃がケイスケの脇腹に直撃。そこでようやくケイスケは眠気が冷める。
「痛いですぉッ!」
「痛くなるように殴ったんだよ!死ぬところじゃん!」
「朝から運転しっぱなしで眠くなるなっていうのが難しいにぃぃッ!少しは休ませろっていう感じィ(白目」
「別に休んでもいいじゃん…」
「休んだらお父様がなんでこんなに遅れたのか死んで詫びろって言ってくるんですにぃぃぃィ!!」
まぁ、俺もそのお父様知ってるから強くは言えない。確かにそうだね…うん、あの人なら言ってきそう。
そしていよいよ、『あの人』ことケイスケのお父様が住んでいる家に到着した。そこは田園広がる一体の隅っこ、山に沿って立てられているわりと大きな田舎風な家。一人で住むには広すぎる家だな…。緑の絨毯が家の前にあって柿の木が並んでいる。縁側には柿が干してある。既に車が何台か古風な家に不釣り合いに庭に停まっていて、親戚と思われる子供達が庭で遊んでいる。
ケイスケのお父様が何をしている人なのかはよくわからないけど、護衛が何人もついたり、テロリストに狙われたりとする事から農家ではないことはあきらか、何かの金持ちっぽい雰囲気はある。
だからこの家はとても違和感があるな。
まぁ元々は親戚の家だけど。
庭のほうは車が一杯だから家の裏にある空き地に車を停めて家に入る。一人で家をきりもりするのは大変らしく、庭のほうは綺麗に片付いているけど裏のほうは雑草が生えまくってた。
「にぃぃぃ…」
ケイスケは周囲を警戒しながら家に近づく。
「どうしたの…」
「親戚連中が来るんですにぃ…嫌な行事ですぉ」
「ふーん」
と、その時、子供のような足音がタッタッタと近づいてきて、
ニートだ!ニートだ!ニートのお兄ちゃんだー!」
うへぇ…。
ケイスケに近づいてきたガキどもはケイスケの周りをくるくると走りまわりながら、そのタキシードのズボンを悪戯に摘んだりする。
「や、やめろ、このクソガキども!」
暴れるケイスケ。
年齢は小学生よりもちょっと下。鼻垂れのノッポの男の子と、スポーツ刈りの小さな男の子、それから女の子の3人だ。
ニートがしゃべった!ニートがしゃべった!」
大はしゃぎの子供達だ。そしてその子供達のうち、一番年齢が幼そうな女の子がケイスケに手を差し出して
ニートのお兄ちゃん、お年玉ちょぉうだーい!」
えらく図々しいな。俺はお年玉は勝手に親戚がくれるもので自分から頂戴って言って周った事はないぞ。
「ダメだよ、ニートのお兄ちゃんはニートだからお年玉は出て来ないよ。ノーマネーでフィニッシュです」
その女の子のお兄ちゃんとも思える顔がよく似たガキが言う。
「お兄さんはニートじゃないですぉぉおぉぉ!!!」
地団駄を踏むニート。じゃなくてケイスケ。
「えー、だってお母さんが『いい年こいて家でアニメばかり見てて3次元のお嫁さんはいつまでもいなくて、2次元にお嫁さんがいる』って言ってたよ〜」
それはニートではないな…。まぁ、どっちにしても子供からしたら奇妙に見える存在ではあるけど。
「お年玉なら、フヒヒ…。(財布から500円玉を出して)これを喰らいやがれですにゃんぉぉぉ!!!」
その500円玉を女の子のほっぺたにグリグリとやるケイスケ。
「ぃぃいいやぁぁぁぁあ!」
と嫌がるものの、それが500円玉だとわかると眼の色を変えすぐさまそれを手にとる女の子。随分と現金な子だ。
「わー!ニートのお兄ちゃんから500円玉貰ったー!」
「すっげぇ…お兄ちゃん!俺にも頂戴!」
と言ってくる。
500円なんてコイツらが貰うお年玉のトータルに比べると大したことはないとは思うんだけど…形状だとかがいいのだろうか…?
「残念でしたァ(白目」
「な、なんだよー!」
「500円しかあげれませーんにゃんッ!」
「うわ…ケチィ…」
ケチぃな、マジで。
しょうがない、俺も大人だからこいつらにお年玉を上げることにしようか。ケイスケが500円玉だから…。
「はい(100円玉を手渡す)」
「うわッ!あ、ありがとう…」
その背の低い男の子は俺に驚いてる。
それから突然ケイスケは俺の肩を抱きしめて、
「フヒヒ…。ケイスケお兄ちゃんのフィアンセですぉ…」
と言う。
「「「えええええええ!!!」」」
ガキどもは驚いた。どれぐらい驚いたかっていうと目を白黒しながらガタガタと震えてヘナヘナと地面に足をつくぐらい。
俺とナツコとケイスケの3人はガキどもを後に家に入っていった。