79 体育会系忘年会… 2

制服で行くとさすがに飲酒免許所持してても学校的に怒られる、という事で一旦家に帰ってから私服に着替えての参加。
俺はバスに乗って駅前から飲み屋街へとやってきて例の居酒屋「よってこ」の前に待機していた。
以前この辺りは俺が最初にドロイドバスターに変身した時に多脚戦車と殺りあった場所なので随分と建物がぶっ壊されたりとかしていた。その後は新しく改装されて綺麗な街並みになっている。
待ち合わせ時間までしばらくそこで待ってると、店の中から目に覚えのある連中が出てきた。これは我がアンダルシア学園高等部の水泳部の中のキミカファンクラブ水泳部出張所の連中ではないか。
「キミカさん!待っていました!」
ぞろぞろと俺の周りに集まってくるファンクラブの連中。
「どうしたの?場所取り?」
「はい!一応自分、幹事なので」
うわぁ…いいように使われてるなぁ…。
などと思っていれば、そろそろ待ち合わせ時間。
駅の方からぞろぞろと歩いてくる集団。目に覚えのある連中。我がアンダルシア学園高等部の水泳部一団だった。
合流して全員が揃ったところで店内へ。そしてカウンター席を通りすぎて奥にあるお座敷の部屋に案内される。適当にテーブルに座ったところで忘年会が開始された。
「え〜…今年も怪我もなく〜(略」
というキャプテン水口の適当な話が終わって乾杯。
俺はこういうタイプの飲み会っていうのが嫌いでしてね…。なにせ今まで友達と行くにしても数えるほどしか居ないし、中学の時はクラスで文化祭の打ち上げ行こうって話になった時も俺とか俺の友達数名は誘われる事すらなかったよ。きっと誘っても断ってただろうなんて思われてたのかな。それでも誘わないっていうのはさぁ…まぁ誘われても断ってたけど。
俺の右隣はナノカで左隣がファンクラブ団員、正面もファンクラブ団員、左前もファンクラブの団員…。ファンクラブ感謝デーかよ、今日は。と思っていたら、
「キミカさん!どうして部活出てくれないんですか!」
なんて話してくるじゃないか。
「え?部活なら毎日出てるよ?」
「えぇ?!…気づかなかった…」
帰宅部との掛け持ちでそっちのほうがメインだけど」
帰宅部は部じゃないじゃないですかァーッ!」
もうお酒が入って顔を赤くしてるファンクラブ団員。仮にそいつを団員Aとしよう。その団員Aはお酒が入ると泣いてしまうタチなのだろうか、顔を赤くして涙を流しながら、
「せっかく水泳部に入ったのに、夏の合宿移行、キミカさんのスクール水着を全然見てないんです…うぅ…」
いや、水泳部はスクール水着見る部じゃねぇし…。まぁ俺も女子のスク水姿を見るために入ったようなもんだけどね、フヒヒ…。
「でもほら、女子水泳部のスク水は毎回拝めたんじゃないの?」
と俺が言うと、
「いや、まぁ、それは確かに、そうなんですけどね…その、」
と声を吃らせる。
すると他のキミカファンクラブ団員、仮にBとすると、団員Bは
「キミカさんの神々しいお体に比べると…う〜ん…女性というよりか筋肉の塊のようなそういう…」
と俺に聞こえるか聞こえないかぐらいのか細い声で言う。
「た、確かに…。肩幅がゴリラみたいだしね…」
俺のその返答に団員達はウンウンと頷いている。
む…殺気…。
見れば女子部員達が俺やファンクラブ団員達を睨んでいるではないか。もう鬼のような形相で、あの筋肉の塊のような豪快な肩と腕でひ弱な団員をガシッと掴んで、
「ん〜どうした〜?飲んでるかァ?新人ンン!」
「うわわわッ!は、はい!飲んでおります!」
うへぇ…負けてる、負けてるよォ…。
普段から結構ビシバシ鍛えられてるっぽいな。
「君達はキミカちゃんに釣られて入ってきた事に気づきたまえ!」
とバンバン背中を叩きながら言う女子水泳部キャプテン。
「うぅ…薄々気付いてたんだけど…やっぱりそうなんですかァ…!キミカさんは広告塔でありそれ以外の何者でもなかったという事なんですかァ!!」
泣き上戸な団員Aが泣きながら言う。
「まぁあたしは帰宅部との掛け持ちだしね。帰宅部は試合ひかえてるから今はちょっと忙しいの」
と俺が返すと、
帰宅部は部じゃないんですってばァ!!!」
と再び涙を流す。
などと、談笑していた時だった。
店の入り口のほうからゾロゾロと知った顔が入ってくるじゃないか。知った顔って言っても名前は知らない、ただ、同じ高校で同じ学年っていう事だけはわかる連中だ。そして「いらっしゃいー!」って元気な店員の声が聞こえるとそのままそいつらは置くのお座敷席、つまり俺達が座ってるテーブル群の隣のテーブル群へと座り始めるではないか。
「んん?あれテニス部じゃん?」
と言ったのはナノカ。
「て、テニスゥ?」
俺はちょっと嫌な予感がしてきた…ぞ。
テニス部って言うとユウカが所属してる部か。あのイケメンなキャプテンが仕切ってるところじゃないか。
と、俺はその今しがた俺が想像してたテニス部のイケメンキャプテンがちょうど部屋に入ってきて俺と目が合うじゃないか。しかもその後ろにユウカが着いてきてる。それがまるで彼氏に先導されてる彼女みたいに見えてクッソムカついたぞコレェ…。
「げ、なんであんたがここにいんのよ?」
っていうのがクソビッチ、ユウカの開口一番のセリフだ。何でってなんだよぉぃ、いちゃぁ悪いのかよ!?
「ユウカっちもここで忘年会だったんだ?」
とナノカが言う。
「うん、偶然だねぇ〜!」
と二人が会話していると、
「おぉぉぉ!!キミカちゃんじゃないか!お久しぶりだよ!」
さっそくテニス部のキャプテンは俺に近寄ってきて俺の手を無理やり取ると強く握った。これにはファンクラブ団員達が睨んで対抗。
「なんですか…先輩ぃ…合コンでも始めるんですかァ?(白目」
と俺は強く握ってくるテニス部キャプテンの手を引き剥がしてから言う。きやすく触るんじゃねーよ!
「合コン!そんなわけないじゃないか!それよりも、そっちは合コンじゃない…よね?いやぁ、驚いた。合コンなわけないよね」
ん?
なんか雰囲気が…。
もしかして:水泳部とテニス部って仲悪い?
よく見てみると水泳部の男子達はテニスのイケメン勢が嫌いみたいだ。ついでに言うと俺に手を出してきたからかキミカファンクラブの団員も連中がたった今嫌いになったみたいだ。
そして水泳部女子はというと…お世辞にも男にモテるようなタイプの女子は後輩で俺が勧誘したお嬢様の神津まどかぐらいしかいない。他の女子は自分よりも美しいもの全般が嫌いなんだろう、テニス部の女子はそれに該当しているらしく、睨んでる。
テニス部は女子も男子も「やれやれ、また水泳部の連中が絡んできたぜ」とでも言いたげな余裕たっぷりの顔でテーブルに座り始めるではないか。おいおい…体育会系同士仲良くしろよ。