79 体育会系忘年会… 1

2学期の終業式が終わった。
いよいよ冬休みかぁ〜。
今年ものんびり過ごそうかな〜。新作ゲームもクリスマス・正月にあわせて沢山ラインナップされるらしいし。新作のアニメのオリジナルビデオデータも沢山ラインナップされるらしいし。ケイスケは今から幕張で行われるコミケの冬の部に備えて体力作りをしているっぽじゃないか。負けてはられないな。
なんて思って颯爽と帰宅部の練習(素早く帰宅する)をしようとした時だった。俺のその普段の行動を知り尽くしているある人物が俺が帰るのを見越して2学期最後のホームルーム終わり1分前で話し掛けてきやがったのだった。
ナノカだ。
「キミカっち!ちょっ、キミカっちってば、早いよ!」
俺が帰れないように俺のバッグを捕まえての一言。でも俺はバッグを置いて帰ろうとしたので今度は俺のスカートを捕まえてそれをズリ下ろしやがった…パンツ一丁になった俺に男子と女子の鋭い視線が集中して恥ずかしいわ…。
「え?えぇ?ななななな、なんだよーッ!」
「ホームルーム終わったらすぐにプールに集合だよ!」
えぇぇぇぇ〜…。
「プールで何するの?部活ゥ?」
「納会やるんだよ!納会!」
「の、納会ぃ?」
納会っていうとアレかな、会社とかでその年の最後にやる締めの儀式って奴じゃないか。その後は忘年会とかやるっていう…。
「そうそう、毎年お馴染みなんだよ?」
「えーッ!!面倒臭いよ…」
「ちょっとだけだから!ちょっとだけ!先っちょだけだから!」
またおっさんみたいな事を…。
「どうせその後に忘年会とかに連れて行かれるんじゃないの?」
「あ〜、それは参加自由だよ?」
「参加自由なら、不参加で」
「だからさ、納会だけは出ようよ!締めだから!」
面倒臭いなぁ…っていうか納会って企業じゃないんだから…。
どうせ体育会系の部活だから納会だとか適当な理由をつけてみんなでわいわい騒ぎたいんだよね、そうだよ、そうに決まってる。そういうのは好きな奴同士でやって欲しいものだよ、ったく。
「ほらほらほらほら!キミカっち!不貞腐れて(ふてくされて)ないで!いこいこ〜ッ!納会へGo!」
ナノカに手を引っ張られて俺は水泳部の納会へと招待された。
場所は変わってプール。
さすがに水泳部の納会だからって水着でやるわけじゃないらしい。プールサイドに集まった面々がキャプテン水口の話を聞いている。顧問のケイスケはコミケの特訓に忙しいからか居ない。
「え〜…というわけで、今年も無事、事故もなくゥ…」
とかダラダラと話してるキャプテンの水口。話の内容はまるで本当にどっかの企業がやってるような納会そのものだ。
「今年も県大会の成績はいまいちで、え〜…相変わらずお嬢様高校の印象が抜けきらず〜…非常に先生方からは〜え〜…」
あ〜っ!うざい。早く終わってよもう〜!
小一時間、クソだるい話が続いて…。
はぁ…。
ようやく終わりそうだな。
「では最後に〜え〜…一本締めをして終わろうと思います」
っておい、そこまで企業の真似?
「いよぉ〜(パンッ)ありがとうございました〜」
(パチパチパチ)
と乾いた拍手が鳴り響き、それから、
「では2次会の会場は毎年お馴染みの居酒屋『よってこ』です」
はぁぁぁぁい?
「全員参加でーっッす」
「まてーい!!」
俺は思わず立ち上がってモノ申した。
「ん?どうしたんだ?藤崎」
「き、希望者のみって聞いたんだけどォォ?!」
「あ〜、あれは一応ね、形だけは希望者だけ〜ってしてるけど、実際は全員参加だよぉ〜。ってみんな分かってると思ってたけど」
と言いながら分かってるよね?って感じで水泳部の女子・男子の顔を見渡す水口キャプテン。それに対して部員はウンウン頷いてるじゃないか、っておいおい!話が違うだろうがーッ!
「あれ?そうだっけ?」
とマヌケな声を出すナノカ。
「そうだよ、っていうか毎回参加してるじゃん、お前」
「あははー。毎回参加してるからわかんなかったよぉ」
ヌゥゥ…。俺は行きたくなーいッ!
一言言ってやろうか…。
「では、あたしは不参加で」
それを聞いた水口キャプテンはスルリとずっこけていた。危うくプールへと落ちるところだった。っていうか落ちればいいのに。
「藤崎ぃ…今の話聞いてなかったのかよ?全員参加だってば」
「そんなの聞いてないよーッ!」
「聞いてなくても決まってたの!ほら、お前のファンクラブの連中も行くんだから、お前が行かなかったらアイツら本当に泣き出すぞ?いいのか?いい歳こいて涙を流しても?」
「別にいいけd、うわッ!」
なんかファンクラブの面々は俺を見ながら、既にボロボロと涙を流しているではないか…。なんだ気持ち悪い。
「うぐッ、ひぐッ、ぎみがざんがいがながったらッ!意味がないじゃないでずがァァァッ!」
おわわわわわ!!
「わ、わかったわかった…いくよ、行けばいいんでしょ?」
あーッ!!
だるいよ…。