78 未だにサンタクロースとか信じてる人って… 3

「す、すごいですの!!本当にサンタクロースを召喚してしまうなんて…!先輩の妹は悪魔召喚師になれますわ!」
え、ちょっ、マジで言ってんの…メイは…。
「いや、だからね、これは、」
とユウカが説明しようとするも、
「ユウカっち…マジで…」
顔面蒼白のナノカ。おいおい、信じちゃってるよ、魔王サンタクロースの存在信じちゃってるよ。
「はわわわわわ…」
震えるユウカ妹。
「いや、だからさぁ」
とユウカが説明しようとすると、
「だって、今、浮いてたよ…悪魔みたいに…」
「…」
おいおい、大丈夫かよ、人が浮いたぐらいでお前ら驚きすぎだろうが、ほら、あの宗教団体の長も座禅したまま空に浮いてたじゃん。
んだよ…クソーッ!いつもこうじゃねーかよー!俺にはリア充の和に加わる資格はないっていうのかーッ!!
と、イライラしてくる俺にユウカが耳元で呟く。
「(なんかみんな信じちゃってるみたいだからいっその事もうサンタクロースで通せばいいんじゃないの?)」
「(えーッ!!)」
「(大丈夫だってば、みんな信じてるからバレないって)」
いや、バレてよ、バレてくれよ。
「あ!サンタさんにほら、供物をあげなきゃ」
ナノカが慌てて供物(ケーキ)を用意する。
用意されたケーキが入った皿を手に取るユウカ妹。そしてカタカタと震える手でその皿を俺の前に置く。
ん?
ちょっと待てよ…。
おいおい…。
なんてこった…。
よくみたらこれ、フォークがないじゃん!!
ど、どうなっとんじゃーッ!!!
俺の分の皿は予備の皿でフォークはもちろん用意していなかったという事かァァァァァァァァ!!!しかもお前ら全員、俺がケーキを食べるのを見守ってるし!手で食えっつぅんかい!!
あぁ、そうだ。アレがあるじゃん。
俺がケイスケの家で夕食を食べる時に使ってるアレ。箸とかフォークとかナイフがまだ準備されてない時は、こうやってグラビティコントロールで食べ物を宙に浮かしてだね…そしてこうやって削りとって口に入るサイズにして…。
もぐもぐ…。
「「「「…」」」」
一同が俺の食べるのを見て固まってる。
ナツコだけが苦笑い。
ユウカ妹は俺が宙にケーキを浮かせて食べてるのを見て、思いっきりジャンプして後方へと飛び退いた。
「ひぃぃいぃぃぃぃぃいいぃぃぃ!!!」
「あわわわわわ!!」
「ご、ごめんなさい、ごめんなさいーッ!」
突然ユウカ妹が土下座(たぶん、布団が折り曲がってるから土下座だと思う)をして謝り始める。
「ど、どうしたの?」
と俺が聞くと、
「今までサンタさんナメてましたーッ!!子供達の夢を壊さないだけで全部大人が仕組んだ芝居だと思ってましたーッ!!」
涙声でそう叫ぶユウカ妹…。
やばい、ユウカと違う意味でコイツはやばい。宗教とかにハマるタイプだ。相当痛い。
それを見たユウカがここぞとばかりに。
「そ、そうよ?あんたがいつも言うこと聞かない悪い子供だったらサンタさんが来て怒られてしまうのよ?」
あーあ…そう言っちゃうか〜…。
「それより…」
と俺が言うと、一同はシーン…。
「供物が足りない。コーヒーがない」
…。
一瞬間を置いて、ナノカが大慌てでコーヒーを持ってくるために台所へとダッシュする。それから、
「え、えっと、豆はどうしますか?あの、えっと」
と大慌てで俺に聞く。
「えーっと…ブルーマウンテンがいい」
「は、はいッ!今すぐにッ!」
ガタンガタンと大慌てでユウカの家の台所からコーヒー豆を探すナノカ。しかし見つからないようだ。しばらくしてから、涙声で、
「ユウカァァァ!!!ブルーマウンテンがないぃぃぃぃ!!終わったァァァ!!私達、みんなゾンビにされるウゥゥゥ!!」
「え?!ええぇぇぇ?!!?」
「だって、モカとかキリマンジャロとか…安い豆しかナァァァァイイイイィィィィィィィ!!」
泣き崩れるナノカ。
なんかもう、お前メガテンのやりすぎだろっていう…。
「あ、あぁ、別にその安いのでもいいよ」と俺。
とりあえずそれしかないならいいか。ケーキで口の中が甘ったるいからコーヒー早く飲みたいし。
「えと、じゃあモカで」
「え?モカはいや。キリマンがいい。ちょっと高いし」
はッとしたユウカが俺を見て、
「ご、ごめんなさいぃぃぃぃ!!!だって、だって、安いのでもいいって言ったからアァァアァァァァァァ!!!」
…お前もメガテンやりすぎだってば。