75 aiPhone4Super 3

俺とソンヒは互いが行列からはみ出さないギリギリまで近寄って、道路の真ん中近くで牽制しあう。
MappleストアとNappleストアの間はせいぜい10メートルあるか無いかの1車線、一方通行の小さな道路なので、嫌だけど余裕で奴に近づく事が出来た。それから俺は、
「ここで何をしてんだよ!」
と一言。
「お前こそここで何をしているニダ!!」
そう言って、狂った狂犬…いや狂った狂犬に噛み付かれて狂った狂人みたいに唸りながらソンヒは俺を睨んでいる。
手には大事そうに液晶パネルタイプの旧世代のスマートフォンっていう奴を持っている。これまたaiPhoneのパクリでチョニーのマンドロイドって奴じゃん。
「うわぁ…ださぁ…」
俺はあからさまに糞でも見るような目でソンヒの持っていたスマートフォンを軽蔑した。もう1瞬だけだったね、1瞬だけみたらもういいやっていう奴。もうあまり長い時間見たくない。こんなのを見続けてたら目が腐るっていうアレ。
「な、な、な…」
ソンヒはそんな俺の反応を見ながら口をパクパクしてワナワナと震えている。そうとう頭に来たらしい。って事はそろそろ来るか?
「ファビョーーーーーーーン!!」
きたきた。
ソンヒは頭のタマネギのさきっちょみたいな髪型のところから湯気でも出そうかという勢いでキレて顔を真っ赤にしながら、
「チョニーは日本国産メーカーで動作が比較的安定しててその中でもマンドロイド2.3に対応してるっていう快挙を成し遂げてるニダ!!日本の大手の通信会社であるンテテ社とかアウ社とかクソフトバンクとか前者で端末が使用できるニダ!!お前の持ってるクソaiPhoneと一緒にするなニダァァァ!!!」
「えーっと…忙しいから一つつづ行こうか。ワケわかんなくなっちゃ行けないからね」
「ニダァ?」
「まずチョニーは日本国産メーカーではありません、朝鮮のサムチョンと合併してるグローバル企業です。はい」
「で、でも、でも、元は日本の企業ニダ!」
「グローバル企業はもう日本の企業じゃないんだけど…」
「…」
「それからマンドロイド2.3に対応してても今は既にマンドロイドはバージョン8.2まであります…バージョンアップ出来ないの?」
「で、できない…ニダぁ…(涙」
「うはぁダセェ…」
「…」
「それからaiPhoneがンテテとかアウで使えないっていうのは公式にはでしょ?ほら、使えるんだけど」
と俺は持っているaiPhoneの旧バージョンを見せる。通信エリアにはちゃんとンテテって表示されている。
「えええ?!ええええ?!おかしいニダ!宣伝ではチョニーのこのスマートフォンは唯一日本の全ての通信会社で使えるってうたってあったニダぁぁぁあ!!おかしい…おかしいニダよ」
「量販店で購入した時に既に使えるようになってるのはチョニーだけっていうオチで、じつは買ってきて設定を自分でいじったらどこの通信会社でも使えるようになるのだ!そう、aiPhoneならね!プギャーーーッ!!」と俺はソンヒを指さして大笑いする。
しかし…これだけ馬鹿にしたはずなのにソンヒはまるでゾンビかのごとくじつにしぶとい。
「ククク…ウリの国の企業と手を組んだチョニーが世界で一番売れてるニダ…。どんなにaiPhoneが凄くても売上台数では到底かなわないにだ…ウハハハハハ!」
売上台数でかなわない?
そんな話は聞いたことが無いぞ?
「証拠はどこにあるんだよ!」
「フッフッフッ…そんなに証拠を見たいニカ?では見せてあげるニダ。ビックリしてオシッコちびっても知らないニダよ?ククク…」
ソンヒはそう言いながら何やらポチポチとスマートフォンの液晶画面をツンツンつついて弄っている。それから、
「これを見るニダ!一ヶ月の売上台数でマンドロイドとaiPhoneを比較した表にだ!!!ウハハハハハ!!圧倒的ニダァ!」
…。
俺は一瞬目を疑ってしまった。
確かにマンドロイドの一ヶ月分売上台数比較でaiPhoneが圧倒的に差を付けられているのだ。しかし…俺は目を疑ったのでちゃんと目が正しいのか確認することにしたのだ。
その表をまじまじと見てみる。
「な、なニカ?なんの変哲もないただのグラフニダよ?」
「いやいや…なんかおかしいよ…」
表にはマンドロイドって書かれた棒とaiPhoneって書かれた棒の二つがあって、圧倒的にマンドロイドが勝ってる。おそらく売上台数だろう。しかし…しかしだ。
マンドロイドの棒グラフには「チョニー」「サムチョン」「身潰し」「ネシー」「宇治通」などなど…さまざまなスマートフォンメーカーが全部合計されてる…。それに対してaiPhoneって書かれた棒には「aiPhone 3 mini カラーリング・ホワイト・1TB・夏の特別ご奉仕台数限定版」って書かれてある。
おいおい…。
マンドロイドを出してるメーカーが全部揃ってもaiPhoneのしかも3だけの(この時にラインナップしているaiPhoneは3と4と2.5がある)しかもmini版だけの(同様にmini、puti、cute版がある)しかもカラーリングがホワイトだけの(実際はホワイト、ブラック、タイガー、スケルトン、ダークグリーンがある)しかも1TB版だけの(実際は1TB、4TB、8TB、16TB、32TB、64TB、128TBがある)しかも夏の特別ご奉仕台数限定版ってアンタ、台数限定販売してる奴に勝っただけじゃん、どんだけ売上台数低いんだよ!!物を売るってレベルじゃねーぞおいいいいいい!!!
俺は親切丁寧にその意味をソンヒに教えてあげると、ソンヒは顔を真っ赤にして「うわあああああああああ!!!この表に騙されたにだァァァァァァァァァ!!!」と怒鳴っている。
それにしても…さっきソンヒに見せて貰った資料(グラフ)を開くまでに1分近くかかったんだけど、これ本当に大丈夫なのか?aiPhoneなら0.1秒もかからないであの程度の表は開けるのに。
気になった俺はソンヒに、
「ねぇ、それでネットのどっかのサイト見てみてよ。どれぐらい快適に動くの?それって動画とかも見れるの?」
ソンヒは硬直した。それから額に汗を浮かべている。
そして、
「な、何を言ってるニダか!うははははは…見れるに決まってるじゃなニカ!こ、このスマートフォンは映像が綺麗に見れるのが特徴ニダ!!それくらいはちょちょいのちょいで…」
と、ちょちょいのちょい、って感じにポチポチ画面にタッチしている…が、なかなか画面が映像に切り替わらないみたいだ。
30秒経過。
1分経過。
3分経過。
…。
「ねぇ…それって、ハングアップしてるんじゃないの?」
「な、何を言い出すニカこの日本人は!だ、大丈夫ニダ!!とても美しい映像が見れるからこれだけ時間が掛かるにだ!!」
5分経過。
10分経過。
「あ、あのさ…映像のダウンロードと加工と再配布と再配布で著作権法に引かかって警察が家に来るぐらいの時間が経過してるんだけど…まだ映像見れないの?」
「う、うるさいニダ!い、いま精神を集中してるニダ!」
一体コイツは何の映像を何を見ようとしてるんだ…。ネバーランドにでも行ったり帰ったりしてるのか?
「あ!!でたニダ!!ほら、綺麗な青の、」
ブルースクリーンが…」
「…」
「…」
ソンヒのスマートフォンブルースクリーンになっており「Application Error :」と表示されていた。
どう考えても美しい動画の映像ではなくて何らかのエラーでOSごとお亡くなりになった画面だった。
俺とソンヒはその画面を見つめているとブルースクリーンが消え黒い画面になり、うっすらと「チョニー」の文字が表示されてその後に「マンドロイド」のタイトルが表示された。どうやらOSが自動的に再起動してしまったようだ。
「い、今から動画が始まるニダ…」
「えー…」
しばらく待つ。
すると、
「Application Error :」
「…」
「…」
「また再起動したね…」
「お、おかしいニダ…。さっきまであんなに元気に動いていたマンドロイドがどうしていきなり再起動マシンになってしまうニカ?」
「…壊れた?」
「ふぁ…ふぁ…」
また来たか!来たか!来るぞ!
「ふぁびょーーーーーーーーーーーーーん!!」