73 右と左のライアーゲーム 4

「スカーレットの事を教えて欲しいんだけど」
と俺はふと思いついて聞いてみる。
俺はスカーレットの事を知っているようであまり知らない。この際だからこの右翼テロリストこと、ジライヤに聞いておくか。今まで殺り合ってそうにも見えるし。
「貴様は今まで知らないで戦っていたのか?」
呆れた顔をする東条。
「じゃぁあんたはあたしの事をどれだけ知ってるの?」
隣に座っている女子高生に「あたしの事をどれだけ知ってるの?」と言われる事は言った後で考えてみると少し異常な状況ではある。それを察知したのか東条は頬を少し赤らめて、メガネをくいッと上げながら
「まぁいい、敵を知ろうとする事は悪い事ではない。私が知っている情報を提供しよう…。スカーレットは左翼系テロリストの『東アジア解放戦線』の首領だ」
「あぁ、それなら…どっかで聞いたことがあるよ」
「東アジア解放戦線の思想は概ね中国の復興だ。戦争で分裂・弱体化した中国の国々を復興させて貿易を活性化させる事。それが連中を支えている企業や人々の生活を潤す事になり、結果的に日本の経済がさらに活性化する…というのが彼らの言い分だが、そのじつ、その基板としてテロで多くの人が傷ついているのが現状だ」
「えと、ちょっと待って。『中国の国々』って何?中国は中国じゃないの?テレビじゃそんなの聞いたこともないよ?」
「貴様は少しはテレビではなくネットの情報を参照したほうがいいだろう…テレビ関係者は基本的に左翼系の人間に洗脳されていると考えていいだろう。彼らは『過去の中国』を言っているだけだ。だから中国や朝鮮にとって都合の悪い情報は出てはこない」
「ネットの情報なら参照してるよ!」
「ほう…」
「ほら、こうやって(aiPadを開き)こんなふうに(某巨大掲示板にアクセスし)…あははは、面白いなぁ(ν速VIPを見る)」
「…」
「な、なによ…?」
「長時間その板を見ると脳細胞が死ぬと言われている」
「ま、マジでぇ?!」
「まぁいい、話を戻そう。今の中国は前の大戦で内部分裂を起こしていくつもの国がその中にある。その国々にはそれぞれテロ組織があり、国の財政を助けたり、軍事力として動いたりもする。そしてそれぞれの国は思想は概ね中国の復活だが、その復活の方法や復活後の主権を誰が握るのかが全く異なっている」
「あー…つまり、三国志時代なのね」
「日本で活動しているテロリストでも東アジア解放戦線のテロ行為は他とは異なっており、金品や電子マネーデータを奪うというものだ。それらの金は中国などで武器を購入したり開発したりする資金源になっていると予測されている」
「でもさ、スカーレットって蓮宝議員なんでしょ?議員ならお金には困ってなさそうな気もするけど…」
と、ここまで話して突然、東条は硬直する。
「貴様…」
「はぁぇ?」
「どこからその情報を?」
「いやいやいや…あたしは戦ったことがあるし、顔みたらわかるじゃん。テレビに出てくる蓮宝議員にそっくりだし」
「スカーレットの顔を認識できるのか?!」
すっごい驚いてるけど…何を言ってるんだコイツは。
「え〜…っと、何を言ってるのかわからないよ」
「スカーレットは日本人とされているが何故警察に捕まえる事ができないのか、それはその姿を認識できないからだ」
「は、はぁ…」
東条は俺のaiPadを横からぽちぽち触って操作すると、ホログラムにはとあるサイトが表示される。そこにはスカーレットと俺が戦ってるシーンが映ってる。
「これが貴様には見えているのかもしれないが、他の人間から見れば女である事は辛うじてわかる程度だ。これがどういう技術を用いて行われているのかは未だに解明されていない」
「え、えぇ?これって電子化された情報でしょ?顔は映ってるじゃん、ほら、蓮宝議員…にクリソツ」
「だから、貴様には識別できるのだろうが私にはそれが蓮宝議員の顔なのか、他の女性の顔なのか識別できない。だがヤツの独特のコスチュームのせいでちゃんと『スカーレット』である事はわかる」
「えええええええ!!!スゲーーーーー!!!!」
って、俺だけなんで区別できるの?どういう目してるの?いや、これは俺の思い込みであって、じつは他の女の人と同じようにも見えたり…なわけない、確かにちゃんと識別できてる。
スカーレットはじつは凄いんだな…。
泥棒にはとっても役立つ能力だね…。
「でも、ドロイドバスターの技術をどこで手に入れてるのかな?ケイスケが開発したものだと思ってたんだけど…」
「『ドロイドバスター計画』は、戦争での主体な兵器がドロイドに移行していくなかで人間でもそれに太刀打ちできるようにと開発されていったパワードスーツが基板になっている。元々はアメリカでこの考えがなされたが日本の技術でそれが実現することとなった。その『日本の技術』はすべて石見博士によってなされたものだ。スカーレットがドロイドバスターの技術を手に入れたのは石見博士の妹がテロリストに連れ去られた後、一部の情報が漏れたのだろう」
「んん?ちょっと待ってよ、ジライヤやイチはどうやってその身体を手に入れたの?」
「ふん。それは秘密だ」
「えー!!スカーレットの話はしたのに、なんでそこだけ秘密なのぉ?どうなのぉ?んもー、意地悪なんだからァ!!」
と俺が東条の脇腹にツンツンと肘鉄を食らわせると、
「ええい!やめろ!空気を読め!」
ちぃ…。
「それにしても、蓮宝議員って軍縮を訴えてる人でしょ?」
「それだけではない。中国の属国になろうだとか、アメリカとの同盟を取り消すだとか、この日本に存在する売国議員の特徴を惜しまなく全て取り入れているほどの売国議員だ。これだけの特徴をもってして保守派のテロリストに殺されていないのが不思議なほどだ…だが、奴がスカーレットならこれにもちゃんと説明がつく。貴様や私が普通の人間では絶対に殺せない事がそれを証明している」
やはり奴を倒すにはドロイドバスター級の力いるって事なのね。
「何か利益になるのかな?」
「大抵は日本の議員での売国議員は外国から金を受け取っている。またそれら議員と関係のある企業などにも結果的には金が回ってくる事になる。それが例え日本を後々苦しめる結果になってもだ」
「なるほど…。軍縮を訴える一方で海外に武器を売り、いざ戦争になればまた武器が売れると…。よく考えてるね」
「うむ。本来ならそれが発覚した時点で国家反逆罪で死刑になるが、どうにか誤魔化しているのが現状だな。奴もそんな中の一人だろう。奴のせいでドロイドバスターの技術までもが中国に漏れてそれぞれのテロリストが保有するまでになっている」
あ〜…。
俺の脳裏にはメイリンが浮かんだ。
あいつも中国の中の分裂した国の一つのテロリストが保有しているドロイドバスターの一人って言うことなのか…。