71 ネットウヨク 4

俺の予測は当たった。
ヤクザというか、ある特定の団体っぽい連中はそれから再び学校にやってきたのだった。
というのも、とある昼休みの事だ。
俺は宿題のプリントを洗濯物と一緒に洗濯しちゃって古文書みたいにしてしまったので、それをスキャナで取り込んで電子化したものを古文の先生に提出しに向った。
「ほほぅ…古文書を見つけたのか?」
などと本当に俺の宿題のプリントを古文書だと思って関心している古文の先生をよそに、職員室では何かしらの緊急の会議が開かれているようだった。厳粛な雰囲気が漂う。
かいつまんで話を聞いていたので正確には聞き取れなかったけど、内容としてはとある団体(?)が学校に対して謝罪と賠償を要求してきてる、その理由は以前、校門の前にやってきた生徒(不良)が怪我を負わされたかららしい。
まぁ「ちょっと待てよ、お前らが先に仕掛けてきたんだろうが」的な内容ではある。でもよくある話…なのかな?
教頭先生が「まいったなぁ…大勢で押しかけてくるって書いてあるよ」とネットワーク端末の画面を指さして言ってる。その変な団体の人達からメールが届いたらしい。
すると突然ケイスケが大声を張り上げたのだ。
「ヤクザの仕業ですにぃぃ!!」
また怒ってるな。
「石見先生…」
普段は非リア充で大人しい(?)ケイスケが大声張り上げて興奮し熱く語ってるので先生方は驚いてる。
「下手に出たら奴等の思う壺ですにぃ!この学校から莫大なお金が奴等に行くことになるし、この学校に日本人じゃない先生が入ってきて反日教育とかも始まるにゃん!!」
見てきたように言ってるな…。
まぁ、お隣の県じゃそうだしね。
「しかし我々だけでは手立ては…」
「いい案があるにゃん!」
「どういう案ですか?」
「フヒヒヒ…向こうは左翼団体、それに対抗できるのは警察か右翼団体だけですにぃ。でも警察は民事不介入だから、右翼団体に頼るのが今時点の最善策ですにゃん…フヒッ…フヒヒッ!」
まるでマッドサイエンティストみたいな笑みを零す。実際マッドサイエンティストだけどね。
右翼?
右翼っていうと街宣車で駅前を占拠したり、そういえば先日のコーネリアの家の周りで集まってた連中も右翼だったじゃないか。米軍は日本から出て行けとか、それって右翼じゃない?
「右翼…というと、駅前で街宣車に乗って日本国旗をなびかせてる人達ですか?しかし…それは」
そうだよ、全然頼りないじゃん。っていうかむしろ連中と一緒になって文句言ってきそうじゃん。アンダルシア学園に飾ってる日本の国旗が汚いとかそんな事から謝罪と賠償が云々って。
「フヒヒ…教頭先生は全然わかっていませんですぉ。それは右翼ではありませんですにぃ。左翼が右翼悪いイメージを植え付けようと右翼にふんして演技してるだけですにぃ。あの街宣車の中にいる人達は日本の国旗をなびかせてるけど日本人じゃないですにゃん」
「ええッ!そうだったんですか」
マジでか…。じゃあ右翼ってどこにいるんだろ?
あの街宣車以外の団体なんて見たことがないけど。
「とりあえずうちの学校としては『事実関係を確認するのでお時間をください』的な事を言っておけばいいですにぃ。後はこの石見佳祐にお任せくださればいいのですにゃん…ニヒヒヒ…」
「わかりました。石見先生、お願いします」
ケイスケは終始、怪しい笑みをこぼしていた。
とりあえずあの笑みは放っておいてケイスケがどんな戦略をするのか、それによって何が起きるのか、そして結末はどうなるのか…俺は最後まで見届けてみようかと思うよ。