71 ネットウヨク 2

「にぃぃぃぃぃ!」
叫びながらケイスケが風呂から出てきた。
全裸で。
「もー。パンツとシャツぐらいは着てよ」
「ぷらんぷらーん!!」
「ちょっ、なんだよ、やめてよ変態」
俺が注意する。
「ふやけて死ぬかと思ったにゃん」
見れば鼻血を拭いた後のようなものが残っている。本当に鼻血を出して倒れたらしい。もうあれから1時間は経つから今までずっと風呂の中で気絶してた事になる。
「にゃん!」
ケイスケはそう言いながら冷蔵庫の中身を開いた。
「うわああああああああ!!!」
それから叫ぶ。なんだよもう忙しい人だなぁ。
「なに?どうしたんだよ?」
「ここに大切にとっておいた僕チンのプレミアムパンプキンアイスクリームが無いにぃぃぃぃ!!!」
「あ、それならメイリンが食ったよ」
「な、な、なんていう…ことを…」
メイリンはプレミアムアイスクリームの残りをケイスケに見せて、
「まだ少し残ってる」
などと言う。
確かに1滴ぐらいは残ってる。
「確かに…1滴ぐらいは残ってますにぃ。これだけあれば明日の体力も足りr…って、なんでやねん!!」
ケイスケのツッコミは久しぶりに聞いたなぁ。
そんな話をしていた時だった。
庭側に設置してある対侵入者用の警報装置が鳴り響いて、ホログラム装置が自動で電源オンとなる。
そして庭の様子が居間の中に流れた。
「んんん?」
ケイスケが目を凝らす。
「また犬とか猫が入ったのかな?」
と俺。
そうそう、この家は厳重な防衛装置にガッチガチに守られててよく犬とか猫がそれに引っかかってブザーがなったりする。酷い時は警告であるレーザービーム砲が発射されて、それでも向かってきた犬・猫は死体となって朝、冷たくなって見つかることもある。
しかしホログラムには動くものは撮影されてないみたいだ。ただ何かパック?スーパーとかで食品を入れてるあのプラスティック製のパックのようなものが転がっているのが見える。あ、いまにぃぁが小屋から出てきてパックの中身(食べ物)を食べてる。
俺とメイリンは窓を開けて庭のほうにスリッパを履いて出て行く。すると、庭ではにぃぁが美味しそうに何かを食べてる様子が俺達の視界でも確認できた。
「にぃぁ、何を食べてるの?」
と俺がそのパックみたいなものを見てみると、
「あ、これ、たこ焼きだ」
すぐにわかった。
独特のお好み焼きソースっぽい香りが漂ってきたからだ。しかも結構出来立てほやほやだぞ。湯気が出てるじゃないか。
あやしい。
ますますあやしい。
「差し入れか」
メイリンが言いながら地面に転がっているたこ焼きに手を伸ばす。ってあんた、差し入れは家に投げ込まれたりしないよ!っていうか誰の差し入れだよ!!しかもメイリンはその地面に落ちてる汚いたこ焼きを食べるなよ!!
しかし。
彼女がたこ焼きに手を伸ばした時、すぐさまそのたこ焼きから手を引っ込めた。地面に落ちるたこ焼き。なんだ?なんだ?何が起きたんだ?食べ物にも欲求のスイッチが入って執着心があるメイリンがそれを地面に落とすなんて。
「どしたの?」
メイリンは指を舐めていた。それから、
「このたこ焼き、針か刃物のようなもの入ってる」
ま、マジ?
メイリンは指を舐めた。指から血が滴っているのが見えた。
「え?でもさっきからにぃぁは食べてるよ?」
と俺はにぃぁを指差した。
美味しそうにたこ焼きを頬張るにぃぁ。とても中に針や刃物が入っている様子じゃない。メイリンがたまたま手に取ったやつにだけ針や刃物が含まれてたんじゃないのかな?
って思ってたら、にぃぁの口の中が時々、カメラのシャッターのようにピカピカと光っているではないか。しかも、明らかに刃物や針の先っちょがたこ焼きから顔をのぞかせているものも口の中に放り込むにぃぁ。
「刃物…食ってる…」
どういう構造なのかわからないけどにぃぁは刃物なども食べれるらしい。あのピカピカ光ってるのって…レーザーみたいなものでとかしてるって事?やべぇ、やべぇよ…マジで…。
俺は一瞬だけ刃物入りのたこ焼きが庭に放り込まれた事よりもそれを食べてるにぃぁに驚きそうになったけど、それはそれで置いといて、重要なのは庭にそんな危険なものが放り込まれたことだよな。
俺の背後からドスドスと音が聞こえる。
ケイスケだ。
そして一言、
「ヤクザの仕業ですにぃ!!許さないにゃん!!」
などと言い出す。
「ヤクザぁ?そんなのに恨まれる覚えはないよ」
メイリンちゃんの家にも爆弾が送り込まれて、うちの家には刃物入りのたこ焼きが送り込まれたということはですにぃ、この二人とヤクザの接点は…」
「え〜…無いよ接点なんて」
「校門の前で他校のクソ不良を病院送りにした件ですにゃん。あいつらの誰かがヤクザと接点があってもおかしくはないですぉ?」
「まぁ、確かに…」
確かに接点と言えばそれぐらいだ。
って言うことは、コーネリアは?彼女はどういう扱いになるのかな?随分前から俺達よりも目立つ行動をしていたっぽいけど。
「でもさ、それならコーネリアとかはどうなるの?」
という疑問をぶつけてみる。
「もしかしたら今頃、危険な事態になっているかも…」
俺とメイリンは顔を合わせた。
「とりあえずコーネリアの家に行ってみようか…」
「うむ」