54 関電ハンター 1

本日は東京に来ています。
観光なら良かったんだけど、またミサカさんのお手伝いである…。
まぁ帰りに観光して帰ることにしましょう。ちなみに人に手伝ってくださいって言っておきながら本人は居ない。許せないね。いくら忙しいからって電話一本でここへ行けって言われてハイハイ行って仕事をして帰るとかデリバリーヘルスかっていうの。風俗嬢かっていうの。しぶしぶ俺は一人、指示された場所にあるごく普通のビルの最上階に行き、指示された通りにとある事務所へと向った。いまいちどういう企業なのかよくわかんない雰囲気だな、このビルは。
廊下の脇にある扉に掛けられたプレートには「公安8課」の文字。
公安8課って…こんなビジネルビルの一角にあるものなのか…。
そういえばちょっと前の戦車暴走事件でハラマキだとかいうハゲのオッサンが所属していた部署だったね。
「誰がハゲのオッサンだ?」
ああ、そうそう、こんな感じの声で。え?
「もしかして:エスパー?」
「いや、君はワシの事をそう声に出して言っているではないか」
「あぁ、すいません」
いつのまにやら部屋に入ろうとする俺の背後にハラマキは来ていたらしい。そして俺は無意識の間にハゲだのズラだの言っていたという事だ。そのハg、いや、ハラマキさんに「入らないのかね?」と促されて俺は部屋に入る。
公安、というと俺の脳裏にあるのは警察と役所の中間というイメージ。規則正しく並んだ机の上には前時代的な紙の用紙が沢山転がっていてコンピュータはどこにもなく、時々部屋の隅に置かれてある白のパネルにこれまた前時代的な写真をマグネットでぴしゃぴしゃと貼りつけて、やれこれは白だとかこれは黒だとか、これからガサに入るとかやれ証拠が出たとか犯人が逃げたとか、そんな話をしている、というイメージ。だが部屋に入ったらそんなイメージは9割ぐらいは無くなってしまった。
目の前にあるのはホログラム発生装置。
黒板も白板もマグネットも写真も黒電話も無く、ホログラムに表示された現在調査中の事件とか並べられたソファにくつろぐゆうに2メートルは超える身体の大きさの大男達など…。ちなみに一致した1割はハラマキさんの禿頭です。
そういえばケイスケの自宅にある研究施設にも同じ様なものがあるけど、これって結構な値段がするんだよね。俺はたまにこれにデータディスクを差し込んで初音ミンクのPVとかをホログラム映像で楽しんだりするけど、本来はそういう使い方をするものじゃあないわけですよ。こんな風に数名の屈強な男達が囲んであれやこれやと議論をする、そんな中心にあるものなのです。
部屋はホログラムをよく見えるようにする為に暗くしてあり、その周囲には公務員って感じが微塵も感じられない屈強な身体つきの男が数名いる。うわ、ここって禁煙じゃないのね。灰皿なんて久々に見た気がするよ。あーくっさいなー。俺、タバコとか嫌いなんだよね。制服に臭いがついちゃう。
「ん?オヤジ、この子は?」
どうやらハラマキさんはここでは部下にオヤジって呼ばれてるらしい。なんてアットホームな職場なんだろう。
「『ドロイドバスター・キミカ』と言えば巷では知らない者は居ないだろう。その変身前が彼女だ」
「よろしくお願いします」
「へへぇ、こんなちっこいのが」
と言ったのは身長が2メーターぐらいはあるんじゃないかっていうぐらいの巨体の男。髪はオールバックで白。身体をサイボーグに改造しているんだろうか、目は義眼って奴らしい。その屈強は巨大な男が身長140センチあるかないかの俺の頭を巨大な手で掴むと、ガシガシとやってくる。ヌゥゥ…。
「ちっこいといって侮るな。ファランクスを装備した特殊装甲の多脚戦車の弾幕を刀一本で弾き飛ばしながら接近して、バリアごと八つ裂きにするのに1分とかからんツワモノだ」
「マジかよ…」
まぁ、邪魔が入らなければ10秒ぐらいだけどね。
「それでオヤジがこの子を呼んだのはなんでだ?」
もう一人の大男はこれまた身長が2メーター以上はある体格の良い男。オールバックの白髪男と同じで目は義眼。ただ頭はツルッパゲだ。
「彼女にハンターを捕まえてもらう事になってな」
「あぁ、被害を最小限に防ごうって事ね」
「ハンター?」
どうやら今回の任務はその「ハンター」って呼ばれてる奴を捕まえる事らしい。この屈強な男達でも手に負えないって判断されてる奴か。イチやジライヤのレベルだとちょっと俺も気合い入れていかなきゃいけないな。
「ハンターを捕まえてもらう前にハンターの説明からだな」とハラマキ。と、それに続いて白髪義眼男が、「毎年毎年、この時期になると出るわけよ、ハンターって連中がな」と言った。
俺の頭の中がハテナマークで埋まっているのを察したのかオヤジことハラマキさんは俺用に説明資料を用意してくれていたらしい。
そしてようやく俺はホログラム装置の本来の使い方を見ることが出来るわけである。