53 ダービー・ザ・ギャンブラー 3

メイリンは不戦勝となった。
全裸で失禁済みのメイリンはゲーセンの店員たちによって外へと運びだされた。
その部屋にはメイリンの漏らした尿の臭いだけが残った。
そしてテーブルの間には俺が立たされている。
上はピンクのブラ、下はピンクの腰の部分は紐で結んであるタイプのビキニのようなパンティー。上下揃えているのはケイスケの好みである。別に勝負下着でもなんでもない。しかし下着自体は高いものらしい。
その下着だけになった女子高生である俺を観客席の人々は「ひゅーひゅー!!」「ぬーげぬーげ!」などと吠えながら見ているのだ。なんという恥ずかしい事なのだろうか。
俺は小学校の時に試合に遅れてきてしまって(何の試合だったか失念)体育館の校長先生とかが話すあの舞台のところで着替えていたんだけどさ、そこに先生が来てから「てめぇなに遅れてんだバカ」とか言いながら怒られた。俺はズボンを着替えようとしてパンツ一丁だったんだよ、あの時。パンツ一丁のまま舞台の上で怒られたんだよ。あの時の事を思い出してもう涙が出てきてさ…。
「うぅ、ひっく…ひくっ…」
泣いた。
キミカ16歳。高校生。
下着姿で泣く。
「ヘイ、キミカ!敵ヲ取ッテアゲマーッス!」
いや嬉しいんだけどさ…。
俺の敵をとるどころか俺に止めをさしそうなんだよ。やめてくれよ、俺はまだ全裸にはなったことはないぞ…。
2回戦目はさすがのダービーも慎重になるようだ。これで勝てば俺は全裸に近い状態になるわけだからね。そしてバカのコーネリアもバカなりに、慎重…と、思った…ん、だけど…?
コーネリアは配られたカードをめくりもせずにただそこに腕組みをしている。
その一方でダービーのほうはカードを既に捲っている。まるでさっきの逆だ。デジャブを見ているようだ。コーネリアは正気なのか?!
「おい、それをめくらないのか?」
ダービーの問い掛けにコーネリアは無言。
「おい!さっきの私の真似をしているのか?それとも勝てる自信があるのか?この私に!この私はダービー・ザ・ギャンブラー!このゲームセンターで最強とうたわれた男だぞ!!」
コーネリアは無言。
それから一呼吸おいて、
「コノママデイイ」
…。
「こ、このままでいいだとゥ?!」
ダービーはコーネリアの肩を掴んでブンブンと揺さぶる。コーネリアのおっぱいも揺れる。しかし顔はさっきと変化してない。まるで悟りでも開いたかのようにすまし顔で肩を揺らされながらダービーとは目を合わさずにいるコーネリア。
「貴様!格好を付けているつもりなのか?それともよほど自分に自信があるのか?それともタダの馬鹿か?!一体何が貴様を動かしている?!本当にこのままでいいのか?このままにするという事は貴様はカードの役なぞ運に任せると、そういう事を言っているのだな?」
「Exactly!(そのとおりでございます)」
凄い。ポーカーフェイスとはこの事なのか?
ダービーの脅しにも屈しない。
「そんな、馬鹿な…!このままでいいだと?!何を考えている…クソ!この俺が動揺している!こんな小娘に動揺させられている!なんて屈辱なんだ!!!クソ!クソ!!焦るな…焦れば奴の思う壺だ…この私はダービー・ザ・ギャンブラー…このゲームセンターで最強と言われた男…。妻も子もいる身、この私は家族を背負ってココに来ている。私一人の気持ちじゃない、私の背中には家族がいるのだ。私は負けない、絶対に負けない…」
おいおい…子持ちのおっさんがゲームセンターで裸の女子高生相手にポーカーしてて何が家族を背負ってるだよ、背負られてる家族は早く降りたくてしょうがないって気持ちだと思うぞマジで。
「ドウシマシタカァ?早クシテクダサイ」
「この私が…私が…」
「早ク決メラレナイノナラ私ガ貴方ノ運命ヲ示シマショウ」
「な、なんだと!」
「貴方ハ、数秒後、オシッコヲ漏ラシマス」
マジ…で?
「そんな、馬鹿な!そんな馬鹿なことなどありえない!」
さすがにいい年こいたおっさんがお漏らしとかないでしょ…。
「今、『イイ年コイタ私ガオシッコナンテ漏ラスワケナイ』…ソウ思イマシタネ?」
「ぐッ…」
俺も思ったけどね!
「小サナ犬ホドヨク吠エル…。貴方ハ自分ヲ大キク見セヨウトシテイル…。本当ニ強イ者ナラ自分カラ名乗ラナイ…何故ナラ皆知ッテルカラ。貴方ハ弱イ!」
「やめろ…やめろ…やめろおおおおおお!」
「サァ!勝負デスゥ!!」
コーネリアがカードを表に裏返す。
そして泣きながらダービーもカードを表に裏返す。
そしてダービーは失禁した。