53 ダービー・ザ・ギャンブラー 1

結局「最後だから」とメイリンとコーネリアが全裸で土下座をやらかして、それを周囲の大勢の人が見ていて俺ももう「実は部外者です」って言えるタイミングを失ってしまって、最後は俺の服を賭ける事となった。ただ、その前にも一幕ありまして…。
二人が土下座をした時にどこからともなく「パチン、パチン」って拍手が聞こえて、金持ちそうないい服を着たおっさんが出てきたのだ。そして二人に向かって、
「実にいい勝負を見せてもらった。二人にはギャンブルをやるだけの熱意がある」
そう言ってのけた。
この流れから想像してもらうとわかるけど、この金持ちそうなおっさんはメイリンとコーネリアの二人がこのゲームセンターで失った分の金額を「自分に勝てたら」あげよう、との事だったのか。金持ってんな〜…。そして代わりに負けたら俺(キミカ)が服を脱ぐ。という事になった。ただ、俺がそれでは可哀想なので俺には服を脱いだ分だけお金をあげると言われた。
「人は私の事を『ダービー』と呼ぶ『ダービー・ザ・ギャンブラー』と。この古巣に巣食っている老いぼれだよ。そして、私は熱意を持つ若い人間が好きな老いぼれだ。さぁ、君たちの熱意を見せてくれ!」
「もちろんだ!」「Sure!!」
そうメイリンとコーネリアが答えたら、
「Good!」とダービーと名乗るおっさんが答える。
ただ女の裸が見たいだけだろうに…。
だってこのおっさんが「古巣に巣食っている」って言った時に「え?誰?」って小さな声が聞こえたぞ。この人知られてないだろう。絶対に知られてない。賭けてもいい。
そして別の部屋に案内される俺達。
そこは「本気の部屋」と呼ばれてて、本気でギャンブルしたい人が誰からの野次なども受けずに精神を集中出来るように用意された部屋だ。だからこの部屋を借りるだけでも既にこのおっさんはお金を払っている事になる。金持ちというのは本当っぽいな。でも、この部屋って上に観客席があって、俺達の勝負をみんなが見れるようになっている。つまり俺の全裸姿もみんなが見れるように…。
「意味ねぇ…」
と俺が呟いたがみんなに無視された。
ダービーと名乗るおっさんと対面式に座る2名の全裸。
このゲームセンターのポーカーは色々とルールがあるうちの一つを採用している。ポーカーそのものは通常のルールだけども、賭ける金をポーカーのカードが配られて組み合わせを本人が選んだ後に決める事が出来る。つまり、自分のカードに自信があるのなら沢山お金を賭けれるが、もしそれで負けたのなら色々な意味でプライドまで傷つけられるという恐怖のルールである。
ついにカードが配れれる。
俺はダービーとメイリン、コーネリアの間に立たされているので双方にどのようなカードが配られているかは覗き込めば判る。でも実は俺はポーカーがわからなくて「ポーカーフェイス」っていう言葉だけは知ってるぐらいの無知度。二人にカードが配られてても何がどうなってるのかよく分かんない。そして全裸になりたくないけど服を脱いだぶんだけお金が貰えるという幸福の天秤状態な俺はどっちを応援したらいいかも分からなくなってきた。
「え?それ?カードが揃ったらいいの?」
メイリンに配られたカードを見ながら俺が言う。
「静かに!相手にカードがバレる!」
「あぁ、ごめん」
「3枚交換ね!」
カードをバシィッとテーブルに叩きつけるメイリン
コーネリアは…。
「5枚交換プリーズ!」
全部交換かよ!
大丈夫なのか?これって全然揃ってなかったって意味でしょ?なんか5枚貰った後もコーネリアはすっごい渋い顔してテーブルに顔を伏せたんだけど、これ、何?全然ダメって事?