52 賢いお金の使い方 6

ルーレットゲーム2投目。
俺はどの数字にしようか色々と迷ったり他の人の顔色を見たり、それから玉を投げたりするゲーセンの人の動きを見たり、今の時間とかを見てみたりとかしてさんざん迷った挙句に3枚分ほど掛けて数字を決めた。
「あー、どうしよう、当たるかな?当たらないかな?」
とか言いながらニコニコとしていたところを巨大な山が襲いかかってきた。その山はどんどん俺の置いたコイン3枚のところまで迫ってきて押し潰して、そして飲み込んで一体化しやがった。このクソ山はコーネリアかメイリンのコイン山に違いないぞ。このクソバカ山が。
「おいおいおいおい!!」
俺は埋もれてしまったコイン3枚を取り出そうと必死にその山のしたの方に爪を立ててカリカリしながらコインをだそうとするけど、その手がピシッって感じで叩かれた。
「キミカ!何してる?」
メイリンだ。
「コインが…あたしのコインがァァァ…」
「ふんッ!貧乏人が!」
「くっそー!」
「これをやる」
メイリンが俺にコインを100枚くれた。
「ひゃっはーい!換金してこよっと」
俺は大喜びでコインを換金しに換金所へ向った。
ゲーセンの中央にある換金所ではコインを紙幣に換金出来るほか換金所でしか手に入らないグッズなどとも変える事が出来る。
そういえば子供の頃に親父がゲーセンで一儲けしたからとかいってゲームとかに変えて家に持って帰ってきてくれたっけ…。懐かしい思い出だなー。という事を考えているうちに、俺は無意識に換金所に来る人達を見ていた。
一人、また一人とお金に変えていく人はいるけども、お金に変えるだけで賞品には目もくれずに立ち去っていく人達。
でもそんな中、ほくほく顔でコインを持ってきてお金以外のものに変えてるおじさんを見つけた。
俺の親父がまだ生きていたらこれぐらいの年齢だ。
そして賞品の中から子供が喜びそうなものを選んで持っていった。何かのゲーム機だろうか。こういうところで遊んで得たお金でも心のどこかで子供の事を考えてて、そして喜ばせようとしてる、喜んだ顔を見たいと思っている、そういう光景を目の当たりにして俺は少し寂しい気持ちになった。
俺の親父は俺を喜ばせようとしてここでコインを賞品に変えた。
そういうのを俺が理解した今、親父はもういない。
コーネリアもメイリンも、ケイスケもナツコも、みんな親がいるんだよな。いいよな〜…。まぁ、高校生にもなって親が親がって言ってるのもあれだけど。家に帰っても親が居ないっていうのは結構寂しいもんなんだよね。
俺は賞品の一覧を見てから何に変えようかと迷った。どれも子供向けのものばかりだ。ゲーム機にしたってケイスケはもう持ってるからなぁ…。あぁ、そっか。ユウカとかナノカとかメイに何があげよう。日頃お世話になってるし。何がいいかな?
と、小一時間悩んでから俺はユウカにはクマの人形、ナノカには花の人形、メイにはカエルの人形を上げることにした。ちなみにカエルはゲコ太というキャラであって、リアルにカエルじゃない。あとナノカにあげる花は普通の花じゃなくて突然変異くんってシリーズの中の花で、放射能で突然変異した花をモチーフにしてあるらしい。それからユウカにあげるクマは地球外から訪れた生物がクマに変身したものを題材にしているらしい。
後はお金に換金して…と。
そういえばあのバカ2名はどうなったかな?
あれだけの金を掛けててもし当たってたら億万長者になってるんじゃないかな?
俺がルーレットのコーナーへと近づくほど観客の声が大きくなっている。「おおおおおおおお!」とか「うわああああああ!」とか歓声が聞こえてきてたから、きっとあの2名のバカが何かやってるんだと確信した。あの二人の周りには騒ぎしか起きないからなぁ。
「ちょっとここを通りますよ」
と人混みを掻き分けて進んだ先には…。
あのバカ2名がいる。
…。
…。
全裸で。
…。
俺は思わず、そのままズッコケた。
吉本新喜劇も真っ青のズッコケだった。