50 おフランスざまス 4

「それにしてもメイリン先輩はお酒がお強いですわね!」
顔を赤くしたメイがメイリンに向かってそう言う。
確かに飲んでるお酒は色が中国酒と同じという理由で選んだのがウイスキーであるし、それを水や氷やお湯で薄めるわけでもなく原液のまま飲んでも顔色は少し赤くなる程度。普段よりも大人しい感じすらする。メイリンはお酒が強いのか。
その一方でコーネリアのほうはビールとシャンパンだけで顔を真っ赤にしてことあるごとにケタケタと笑っている。橋が転げても笑う年頃っていう奴だっけ、もう唐突に「ウンコ」とか言っても大笑いして腹を抱えて転げまわって窒息死しそうな勢いだ。
そのコーネリアがメイリンに一言言う。
「ヘイ!メイリィィーーーン!!実ハ酔ッテマスネ?」
「な…」
「ノーノーノーノーノーノーノーノー!隠シテモ判ルノデースッ!」
「なんだ屑虫。私、酔ってない。酔ってる顔見えるか?」
酔っぱらいに絡まれるメイリン。しかし表情はひとつも崩さない。
「酔ッテマーッス!!」
「何故?」
「何故ナラ人ハ実ハ結構頻繁ニ思ッテイル事ト逆ノ表情ヲシヨウトスル時ガアルカラデース!ソレハメイリィィィーーーーーーーンノ場合デモ例外デハアリマセーン!!」
「私、酔ってない。正直に酔ってない」
「笑イタクナイ時ニ笑ッテ、笑イタイ時ニ我慢シマーッス!メイリィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーンノ場合ハ変態ナノデソレヲ隠ソウトシテ真面目ナ顔ヲシマーッス」
ほうほう、なるほど。いつも表情が同じ人って何かを隠してる場合が多いよね。メイリンが真面目な顔なのは変態の裏返しというわけか。
「ダカラーメイリィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンノ本当ノ顔ハ、コンナ顔デーッス!」
コーネリアは顔全体の筋肉を緩めて目は右斜め上に8割ぐらい白目で、舌を伸ばしてだらんと垂らし、涎を垂らし、はぁはぁと熱そうな吐息をした。これはまさにアヘ顔だ。
ちなみにアヘ顔って俺が何で知ってるかっていうと…ケイスケが前にアヘ顔美少女が沢山登場する卑猥なエロゲをプレイしているのを遠目で見ていたからだ。そんな2次元の可愛らしいアヘ顔とは異なって、いくらコーネリアが美少女のアメリカ人であろうともリアルアヘ顔はエロゲと異なり萌える要素がどこにもなく気持ち悪いだけだった。
「そんな顔してない!」
「そうよ、メイリンはそんな人じゃないわ」
またユウカが出てきた。
メイリンに唯一の望みをかけてるらしい。
「ノーーー!!コンナ顔デーッス!」
コーネリアは真顔に戻した後、再び顔全体の筋肉を緩めて目は左斜め上で9割ぐらい白目、舌を伸ばして唇を下唇だけ痙攣させ、涎を垂らして「アヘアヘ」とアホな声を出した。まさにアヘ顔。ってかいくらアヘ顔でも「アヘアヘ」とか言わないって。
コーネリアはメイリンの横に行くと、「本当ハ虐メテ欲シインジャナイノー?hehehehe…」などと言いチャイナドレスの袖を捲ったり閉じたりを繰り返す。ピンクのパンティーがチラチラと見える。なんだか面白くなって俺もメイリンの側に行き、「ほら、正直に言ってごらん、我慢すると身体によくないよ…フヒヒッ」とメイリンのおっぱいをツンツンとつつく。どうやらこのチャイナドレスは胸の部分の布は別になっててペラペラの捲れるようになってるっぽい。
そんな事を繰り返してるとメイリンは次第に顔全体の筋肉を緩めて目は右斜め上に8割ぐらい白目で、舌を伸ばしてだらんと垂らし、涎を垂らし、はぁはぁと熱そうな吐息をした。まさにアヘ顔だ。
「離せクソ虫ども」
突然アヘ顔のメイリンはキリリと真顔に戻り、椅子から立ち上がって構える。しかし太ももから愛液っぽいのが垂れてるし酔ってないとか言っていながら足はふらふら。今にも倒れそう。そしてこれは何かの格闘技の構えか?
「ヘーイ!ヤルノデスカー?」
コーネリアも構える。しかし産まれたばかりの小鹿のようにプルプルと足は震えてふらついた後にまるで足腰の弱いおじいさんの様に椅子に手を掛けて震えながら倒れそうになるのに耐えてる。
「ちょっと、二人ともやめなさいよ!」とユウカが止めにはいろうとする。でも、「ちょっとキミカ、二人を止めなさいよ」と俺にふるし。この二人は変身してるから俺でも止めようがないんだよねぇ。あぁ面倒くさいなぁ。
と俺が思った瞬間だった。
「コレヲ見テモ!マダ!平静ヲ装ッテイラレマスカァ?」
と変身後のコーネリアは俺の動体視力を凌ぐスピードで素早く「俺の」ドレスを右のおっぱいの部分だけ脱がしておっぱいをぷんぷるんと露出させやがった。
それを見たメイリンは息を吸い込んだまま呼吸を止めたように止まり、顔はどんどん真っ赤になり、汗が顔に垂れてきて、そして
「ぷっ」
という音と共に鼻血を飛ばした。
「Yeeeeeaaaaaaaaahhhhhhhh!!!」
勝利の雄叫びのコーネリア。
メイリンはふらふらと産まれたばかりの小鹿のような足で体勢を崩すと、2、3歩後ろに下がる。相当なダメージらしい。そしてそのまま背後にあるお皿がたくさん並んでいるショーケースみたいなところに後ろ頭から落下した。
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
これはメイの叫び声であって、メイリンの叫び声ではない。
「あちゃー…何やってんだよ!」
「HAHAHAHA!!stupid!!!」
メイはお皿を見ながら、
「ここ、こここここ、こここれは10万…こっちは25万…フランスから取り寄せた貴族が使用していたと言われるお皿ですわ…」
え、マジで?
店の奥からも人が出てきて、フランス人らしき野郎がフランス語で何やらすごい剣幕。
「メイ、このおっさんなんて言ってんの?」
「『弁償しろこのやろう!』ですわ…」
ははは、大変だなメイリンは。