50 おフランスざまス 3

ほぼ全員にメインディッシュの大きなお皿の真ん中に赤い肉が転がっている何かが届いた。
料理の名前はさっきこれを持ってきた人が行ったけどフランス語らしい変な発音だったので全然理解出来なかった。
ちなみにメイリンはフォークとナイフが使えないからという理由でMy箸を持参している。それで中華料理を食べるかのように片方にライスの入った皿、もう片方の箸でおかずであるお皿の真ん中に転がっている赤い肉をつまんでいる。
ユウカのターゲットは既にコーネリアからは離れたようだ。
「中国人とはこうあるべきだ」的なもので日本のマスコミが垂れ流した情報にはロクなものはないのでユウカ的にはメイリンにあまり良いイメージはないっぽいのだけど、それでもメイリンの妙に男らしいところというかコーネリアと違って無口でキリリとしたツンデレキャラ丸出しの表情などから、性格に対して若干の期待をしているふしはある。
メイリンは中国ではどんな事をしてたの?」
それは何気ない質問だった。
だけど俺はメイリンがなんて答えるのか少し考えてみた。ふと最初にメイリンと出会ったシーンが脳裏に浮かんだ。たしか…最初はスカーレットが連れてきていた。つまりテロリストの仲間で…。
「中国では日本人と戦うテロr」
メイリンがそこまで言い掛けたところで俺は思いっきりブレードの持つ部分の方でメイリンの腰を叩いた。
やっぱり言いやがったかコイツは。
「あ…ん」
メイリンが吐息にもとれるいやらしい声を漏らす。
「日本人と戦うテロ?」
「あー、うん、日本人とテ…コンドー、テコンドーで戦ってたんだってさ、試合だよ、すごいよね〜」
と俺はごまかす。
メイリンは俺のほうをじっと見つめて、
「テロr」
再びそのキーワードを言おうとしたので俺がさっきと同じ様にブレードの持つ部分のほうでメイリンの腰を叩く。
「あ…ん」
…。
…。
こいつ!
味をしめたな!
俺はメイリンの側まで近づいてから耳打ちしようとするが、メイリンはくすぐったそうに(それでも表情は崩さずに)時折笑顔を見せながら俺の耳打ちを邪魔する。
「(メイリンの正体がバレたらどうするんだよ?)」
メイリンの腕を掴んでそう耳打ちすると、
「しょうたい?」
「(そうだよ、学校にいられなくなるよ?)」
「それは、こまる」
メイリンは訂正する。
「日本人とテコンドー、楽しい」
「へぇ〜すごいな〜中国人って格闘技をみんなできそうだよね」
そんな褒め攻撃にも全然表情を崩さない。普通はそこでちょっとテレたりするものだけど。
そしてそんなクールなメイリンを気にいってきた奴が一人。そう、ユウカである。
メイリンは日本に何しにきたの?」
あちゃー…それも聞いたらダメな質問じゃん。
俺はメイリンがまた「テロをしにきた」とか言ったら今度は頭をしばこうと思って待機してた。けど、メイリンの口から出た答えは意外にも俺が想定したのと違って、
「日本で色々学びにきた」
というシンプルなモノだった。
「へぇ〜文化とか?」
「いや。国の作り方。いい国の作り方」
意外な答えに一同はきょとんとする。
メイリンはどこかで独立国でも作って暮らそうと思ってるのだろうか。実際そういう国は(金持ちが島を買って独立国を作った)色々あるけれども、それは既存にある国々の了承をとっているから、結局、形だけの独立であって本当に国をつくっているわけではない。
そうそう簡単に国が作れるとは思えないけどな。
例え沢山お金があったとしても。