50 おフランスざまス 1

本日はおフランス料理を食べに来ている。
メイの親父さんの会社はとても大きいらしくフランス料理のお店も南首都や俺達が住んでる街にもあったりする。
周囲が緑地に囲まれたスポーツ公園の片隅の日陰に存在してる洋風ないでたちのお店もメイの親族が経営している店だったとは知りもしなかった。俺が小さい頃からあったような気がするよ。
メイが呼んだのはいつものメンバー。俺とナノカとユウカ。ナツコは例によってパニック症候群で周囲に知らない人が沢山いる場所はあまり好きではないので不参加。それでメンバーが足りてないとかっていう話になって、じゃあ例の外国人を呼んだら面白いんじゃないかとナノカが言い出したせいでメイリンとコーネリアが来てしまった。
まだコーネリアは性格はアレだけども文化というのを弁えてるからすくなくとも「粗相」を望んでするような事はしないだろう。
問題はメイリンだ。
この中国人、とんでもない変態である。そしてことあるごとに視界に入るものを持って帰ろうとする。よって「余程の事が無い限り日本で無料で持って帰れるようなものは存在しない」と釘を刺しておいた。それを言ったときの苦虫を噛み潰した様な顔は印象的だったな。どんだけ欲しいんだよっていう…。
あと、このレストランは随分と高級料理を出すためか客層にも気を使うらしい。それでここに来る人は正装のみとなっている。服装を限定していない時はそれほどお金を持っていない客が来たりした。それだけではなく大抵そういう客はガラが悪く、店中に響くような大声で話したり、店中を走りまわる子供を連れてきたり、店員を呼び出しては怒鳴り散らしたり、全席禁煙なのにタバコ吸ったりと色々と大変らしい。
正装、というとメイリンに聞けば「葬式の時に着る服か?」と言い、コーネリアに聞けば「全裸にネクタイ」と言ったので俺はとにかく何かドレスのようなものと答えておいた。俺も実は女性の正装は何なのか分かってない。二人はお金もそれほど持っているわけでもないのでもちろんドレスの「ド」の字もあるわけがなく、「もう無理してまで来なくてもいいよ」と言うと、必死になってあれやこれやと考えあぐねた結果、メイリンもコーネリアも変身してきやがった。
メイリンの変身後はチャイナドレス。
コーネリアの変身後はゴスロリのような…いや、違うな。黒のドレスだ。肩が露出してて背中も肩甲骨が見える。そして脇のあたりまでありそうな長い手袋。これはなんていうんだっけかな…。下はミニのひらひらスカートにレースのタイツ。
この二人の変貌ぶりにはメイもひっくり返って白目を剥いたほどにびっくりしていた。何故ならメイにもユウカやナノカにとっても、この二人はバカのアメリカ人と変態の中国人というイメージしか無かったからだ。まさかこんな「どこかの金持ちのお嬢様」とも思えるような格好で来るなんて思わないだろう。
ちなみに俺は正装と呼べる物はナツコが持っている着物以外は無かったのでケイスケに一言話したところ、やけにシースルーな白とピンクの色が混在しているワンピースタイプのスカートが短いドレスを用意しやがった。これは一つ間違えば風俗嬢だ。
「こ、これ…」
と、俺が文句の一つでも言おうとしたら有無をいわさず「これからの季節は暑いからこれぐらい風通しがいいほうがいいんだにゃん!」と早口でまくし立てるように言って俺にそれを着させた。
あのユウカでさえも、「何よそれ…ちょっといいセンスじゃない。っていうか胸元強調しすぎでしょ…また男を釣るような服ね!」と嫉妬している。
鏡の前で確認しても随分と色っぽいドレスなのだ。ケイスケのセンスもついにアニメの域を超え始めたのか…一体どこへ向かっているんだよ、あの科学者は。