49 体育倉庫で二人っきりで… 1

「わが校の生徒は社会に出ても一人一人が社会人としての自覚を持って行動出来るように成るために、それぞれに役目があり、その役目を全う出来るチャンスがあるものとする」
という校長先生の偉いお言葉に従ってクラスでは全員が何かしらの委員につく事になっている。例えば保健委員だったら誰かが気分が悪かったら保健室に連れて行ってあげるとか、図書委員だったら交代で図書室の本の貸し出しなどの受付をしたり、掃除をしたり…。
では、文化祭実行委員だったら?
実は俺は文化祭実行委員になっていた。
これに決まったときに後でケイスケに抗議をしにいったが、「キミカちゃんが楽になるように一番楽なのを選んだぉ!」と嬉しそうに答えたのでもう抗議はしないことにした。つまり、年に一回だけ文化祭での活躍がある委員なのだ。
でもこれに惑わされたよ…。
文化祭だけでの活躍じゃない。
文化祭にいたるまでの準備など全部しなきゃいけない。例えば他の帰宅部精鋭達が颯爽と家に帰る中、俺は学校に遅くまで残って苦痛の時間を歩まなかればならないのだ。なんという残酷な委員なのでしょう。
二人がペアで選ばれるわけで、相手がしっかりした人ならお任せして俺は帰ります、なんて事ができただろうに、残念ながらメイリンが文化祭実行委員の相方であった。
そのメイリンと二人で今日は体育倉庫に文化祭で使う看板やらを確認に行くことになった。体育倉庫の奥には文化祭に使う色々な道具が揃っており、もしそれが足りないのなら新たに作ったり購入したりしなきゃいけない。だから今日の作業はそこに繋げるための非常に重要な事前チェックなのであった。
「キミカ、これ、持って帰ってもいいか?」
「だめ」
「これは?」
「だめだめ」
「これは?」
「だめだめだめだーめ!」
「えと、じゃあ」
「だあぁぁぁぁぁんめ!!」
「これは?」
「だめだめだめだめだめだめだめ!」
「じゃあ、」
「どれもだめ!この学校にあるものは何一つ持って帰ったらだめなの!学校のものなんだから!」
あー。マジで疲れる。
さっきからこんなやり取りがずっと続いてる。
「キミカ!!キミカ!!これは凄い!」
「あ〜?」
俺が近づいてみてみると、積み重ねられた様々なものの隙間に薄い本が挟まっている。プラスティックの質感で表面にアニメ絵っぽいのが描かれている。これは同人誌?
「こ、これも学校のものか?」
「これは誰かが置いてったものだね」
いやぁ、今考えると、ここで「その同人誌も学校のものだ!」と言っておけばよかったと思ったよ。後でね。何故ならそのあと、メイリンは目を血走らせてそのエロ本を引っ張り出そうとしたのだ。そして、
(どんがらがっしゃーん!!)