48 魔法少女キミカ☆マジか? 5

群衆と朝曰新聞のレポーターをふりきって俺はドロイド達が暴れているところに向い、端から斬り倒す。
雑魚のドロイドの動きはすっトロイ。軽くかわすと、俺は回し踵落としキメてまたアスファルトの中にドロイドを埋め込む。
今度は正面から飛び掛ってくる雑魚。蹴りで受け止める俺。
背後には次の、そのまた次の攻撃待ちのドロイドがいる。蹴りで受け止めたまま、俺のグラビティコントロールで動けなくなっているドロイドを放って後ろの攻撃待ちのドロイドに吹っ飛ばす。と、そこでまたしてもキミカ・インパクトを放ってまとめてぺちゃんこにする。
「それにしても雑魚い…」
俺は飛び掛ってくるドロイドをブレードで真っ二つにしながら言う。
普通の人間からすればドロイドが飛び掛ってきた時点でアウトだけど、俺やメイリンやコーネリアにはこういった飛び道具を使わない系の、しかもドロイドとあれば、変身して無くても倒してしまいそうだ。あれだけ沢山いた痛ドロイドはあっという間に鉄くずに変わった。
メイリンが最後に残った小さなドロイドの一つを真っ二つにした後、振り返ってから「あぁ?」と言う。
そこには大型のペイントされたドロイド…いや、戦車に、頭を噛じられているコーネリアの姿がある。
「意味が解らないよ…」
俺とメイリンは下からその様子を見上げる。
ユウカ妹の説明ではこの戦車がシャルロッテらしい。そのシャルロッテにマミさん(コーネリア)が頭を噛じられてジタバタを胴体を動かしている。首もとはバリアが機能して青白い光がビリビリと輝いている。
「ヘェェェェェエエエエーーーイイイイ!!…ヘエェェェェエルルルルルプミィィィィ!!」
一体何をどうしたらこんな状態になるのか。
よく見るとこのドロイドは戦車でも何でもなく、ただの重機だ。市街地やら森で道などを舗装する時にモノを運んだりするタイプの奴にペイントが施されているだけだ。そしてコーネリアが頭を掴まれているのは石やら木やらを掴んでどける為に用意されている重機の手の部分だった。そこにさっきユウカ妹が言ってた「シャルロッテ」の頭の部分がペイントされているので遠目に見たらまるでそのシャルロッテに頭を噛じられている様にも見える。
メイリンがその異様な光景の真下に立ち、
「いくら払う?私助ける、いくら払う?」
ここまで来ても現金な奴だなぁ。
「ワタシノバッグニアル食ベカケノタイ焼キ上ゲルヨォォ!!Help!!」
「わかった」
たい焼きでしかも食いかけで助かる命っていうのも安いもんだなぁ…。
メイリンは矛を構えると腰にそれをあてがい滑るようにシャルロッテの下に入る。そして乱舞。真っ赤な一閃がシャルロッテの胴体を八つ裂きにした。なかなかの矛さばき…こいつも武道の心得があるみたいだな…。戦車の切り口は真っ赤に燃えていてメイリンの矛が俺のとは別のタイプのレーザーブレード系の兵器であることが判る。しかも今は矛として使っているけども、レーザービーム砲みたいな使い方も出来るっぽい。
「あ」
ガラガラと崩れるシャルロッテの胴体。その中からシャルロッテの頭がペイントされた巨大な頭のようなものがふらふらと起き上がる。よく見るとコーネリアがシャルロッテの頭を被ったまままるで巨大な兜でも被っているかのようにふらふらと歩いているだけだった。
「Noooo!!!明カリヲ、明カリヲツケテクダサーイ!」
どうやら前は見えないらしい。
メイリンはコーネリアを助けようともせず戦車の残骸から金目のものがないか漁っているみたいだ…さすがメイリンさん、ぱねぇっす…。
なんか面白いのでそのままコーネリアの手を引いてユウカ妹さんのところに挨拶に行った。だって妹さんは魔法少女マドカなんとかが好きなんだよね。
「目ガァァァ!!目ガァァァァァァアアアア!!!」
まるでムス◯のようにふらふらと歩いて手を上下左右に動かしているコーネリア。
「ひッ!」
ユウカ妹は本気で恐怖で顔を引きつらせる。
それもそのはずだ。
普通の人間ならその重量で押しつぶされてぺちゃんこになるであろう巨大な戦車の頭…じゃなかった重機の手の部分をコーネリアは軽々と頭に被ってふらふらと歩いて来る。まぁ俺と同じでドロイドバスター級のパワーがあるから出来る芸当なだけなんだけど。よくよく考えると確かに怖い。ユウカは妹を置いて逃げ出す。車椅子を押して逃げると遅いからね。
「いやああああああああああああああああああああ!!!!!!!マミさんが、マミさんが魔女化したぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
幼女が叫ぶ。
それでも動じないコーネリア。そして、
「マゾ化シテイマセーン…」
と意味不明な事を言う。
「さすがにやり過ぎたかな」
まさかユウカ妹がおしっこまで漏らしちゃうとは思わなかったよ。簀巻きの間から黄色の液体がチロチロと流れ出ているのが俺にも見える。これには笑った。
しかし、それだけではなかった。
車椅子から転げ落ちたユウカ妹は、まるで赤ちゃんがハイハイでもするかのように…いや違うな。芋虫が進むようにアスファルトの上をヒョコヒョコ進んで、それはどんどん早くなり、次に手を出し足を出し、犬と見間違うぐらいの早さになった後、とうとう2足歩行し、最後はそのまま走って逃げて行った。
やればできるじゃん。
俺はブレードでシャルロッテの頭を八つ裂きにして、コーネリアに世界の光を見せてあげた。
「Ohh!!見エル!見エルヨ…ママン…」
…。