48 魔法少女キミカ☆マジか? 4

「一瞬デ片付ケテアゲマーッス!!!」
コーネリアはビルの隙間から路上に飛び出した瞬間にミサイルを発射。小型のミサイルが空に舞い上がると地面に向かって降り注ぐ。しかし、その一瞬でペイントされた戦車が周囲にバリアを張ったのを俺は確認した。コーネリアの攻撃がバリアで塞がれる。
俺は隣のビルの屋上まで飛び上がってそこへ着地。様子を伺う。
すると下の方から「キミカ!!」とユウカの声が。
見ると歓喜の表情で俺の姿を見ているユウカとユウカ妹の姿がある。
それだけじゃない。
さっきまで慌てて逃げ出しながらも興味本位で写真を取ってた群衆が俺の存在に気付いて歓喜の声を上げてるのだ。そしてここぞとばかりに写真をパシャパシャと撮る。ったく、巻き込まれても知らないぞ…。
最初はこの戦車、そして周囲のドロイドの順にバリアを貼っていく。しかし貼るのは瞬時ではなくゆっくりと一台一台だ。よって、貼り遅れた奴のところにメイリンは滑りこむように飛び出し矛を振り回す。矛の描く曲線が地面から空へと向かって三日月形状に赤く光って残像が残り、その後は真っ二つにされたドロイドの残骸が残った。
背後から再び叫び声。これは俺への声援ではないな。
見ると小型のドロイドがメイリンの攻撃をすり抜けてユウカ達が居る方へ滑るように向かっている。
「ヘイ!キミカ!一匹ソッチニ逃ゲマシタ!」
と、コーネリアは振り向きついでにミサイルを放ってドロイドをに命中させる、が、バリアを剥がした程度だ。
俺はビルの屋上からゆっくりとダイブすると、ビルの側面方向にグラビティコントロールを効かせて自らの身体を反動で押し出す。ビル側面がメキメキと音を立ててへこむが、一方で俺の身体は群衆が居る方に通常よりも早く飛ぶことが出来る。まるで弾丸の如く。そしてある程度近づいたところでグラビティコントロールを働かせてアスファルトを削りながらブレーキを効かせ、滑りながら俺は手のひらで銃の形を作ってドロイドに狙いをつける。
決してこれは遊んでいるわけではなく、俺の必殺技である。ヒーローは普段暇な時、じゃなかった、常日頃から必殺技を編み出すように修行を繰り返しているわけである。
俺が手のひらで作り出した銃を「ばーんッ」と撃つように動かすと、群衆に近づいていたドロイドの周囲がメキメキと音を立てて沈む。そしてドロイドは廃品処理を行う工場のプレス機に潰されたようにぺちゃんこになるのだ。…周囲のアスファルトと一緒に。
これが秘技「キミカ・インパクト」
「キミカ・インパクト」…それは俺が編み出したグラビティコントロールを応用した必殺技で、地球などの超重力がある方向へ垂直に最大限の重力波攻撃を行う。ちなみに射程距離も短くて発動までタイムラグがあるのでショット・アンド・ヒットというワケには行かないけど、喰らった奴はバリアや装甲が弱ければ一瞬でアレになる。アレ、というのはいましがた巨大なゾウの足にでも踏み潰されたようにぺちゃんこになったドロイドの残骸である。
そしてその側へと滑るように着地。
「キミカ!!」「魔法少女!!」
姉妹揃って歓喜の叫びをあげる。
群衆も一斉に俺のほうに駆け寄ってくる。
「視線お願いしまーすッ!」「うわぁぁぁぁ!!ホンモノだ!!」うわあああ!!!」「きゃーッ!!本物よ!!可愛い!小さい!」「娘がファンなんです、サインお願いします」「(必死に携帯で写真を撮るサラリーマン風の男)」
と、そんな群衆を掻き分けてカメラを持った男と、それからマイクを持った女が駆け寄ってくる。見た感じはテレビ局の人間っぽい。そしてそいつらは、「朝曰(あさいわく)新聞です!是非ともインタビューに、」
などと戦闘中でもお構いなしに言ってくる。
「今戦闘中だから」
と俺は手を振って『どっかいけ』的なジェスチャーをするが、「大丈夫ですよ、大丈夫だから」などと言ってる。何が大丈夫なんだ。まぁ、幸いにもビルが壊れただけで死傷者はまだ出てないけど。
「気をつけて魔法少女!マミさんがシャルロッテと戦ってるから、やられないようにして!!助けてあげて!」と泣きそうな声で叫ぶユウカ妹。ちなみに簀巻きの状態で叫んでいるので普通に叫ぶよりも鬼気迫るものがある。
「えっと、マミさん?って誰だっけ…」
「あのツインテールの黒のドレスの女の人!」
「あぁ、そうなんだ…(コーネリアの事か)あたしはなんていうの?」
「えーっと…やっぱり主人公?」
「じゃああのチャイナドレスの女の子は?(俺がメイリンを指さして言うと)」
「杏子!」
「あぁ、そうなんだ…ところでシャルロッテって、」
とその時だった。
「いやああああああああああああああああああああ!!!」
突然ユウカ妹が叫ぶ。
俺は妹が見ていると思われる方向を見てみた。
見ると、そこには異様な光景が広がっていたのだ。
マミさん(コーネリア)が魔女(ペイントされた戦車)に頭を噛じられてる。
俺は思わず「クスッ」と笑ってしまった。