48 魔法少女キミカ☆マジか? 2

一方でメイリンは妹よりも周囲の部屋を気にしているようだ。
「日本では病気なるとこんないい部屋住める?凄い。ゲーム機。これ、持って帰っていいか?」
「いいわけ無いじゃん!っていうかユウカの家のものでしょ」
「全部家のものか?!」
メイリンは眼の色を変えて物色をし始める。
そして漫画本にも手を伸ばし始めて本の間からポスターらしきものを引っ張り出している。メイリンが広げたポスターを見てユウカが「またこんなものを…」と言っている。
ポスターには「魔法少女まどか☆☆じか」とタイトルが書かれてある。中には魔法少女という言葉どおり、メルヘンチックな装備に身を包んだ女の子が5人いる。子供向けのアニメか?でもケイスケの部屋にも同じ様なポスターがあったぞ。
「アニメばっかり見てると私の担任みたいになるわよ」などとユウカに言われている。
本当にケイスケは色々な場面でダメな大人の代名詞みたいに扱われているなぁ。可哀想に。
コーネリアはポスターの美少女達を指さしながら、
魔法少女?クール…」などと言っている。
「私もいつか魔法少女になるんだ!」
「Oh…」
簀巻きが背筋をぴんと伸ばして言う。なんとも滑稽だ…。そして周囲からは痛い人でも見るような目で見られている。コーネリアの十分に痛いのにそのコーネリアにそんな目で見られるのもアレだぞ、大丈夫なのかユウカ妹。
「はぁ、またそんな担任の先生みたいな事を…」
いやいや、ケイスケはそこまで痛くないよ。あと簀巻きじゃないし。「魔法少女になる」じゃなくてどっちかっていうと「魔法少女とエッチする」のほうじゃないかな。薄っぺらい癖に値段が高いエッチな本で魔法少女モノが沢山あった気がするよ。
「もう、キミカもなんとか言ってやってよ」
なんか「お父さんもなんとか言ってやってくださいよ」ってお母さんに言われるような雰囲気で俺に振ってくるユウカ。
…まぁこの簀巻きもまだ小学生だからギリギリセーフじゃないのかなぁ?これが高校でも言うようになったらちょっと電波入ってますね、って病院に連れていかれると予測するけど。
「まずは歩けるようになってからだね」
「あら、まともな事いうじゃない」
くぅ…『まともな事いうじゃない』かよ。
それは俺にとっては『ボキャブラリーが乏しいですね』って意味と同義なんだよ。なんかもっと捻りがある言葉を吐けなかったものか。例えば「それはお嬢ちゃんが好きな人を見つけて少女から一人の女になってからだね、フヒヒッ」とか、いや、これはこれでひねりすぎてユウカのビンタが飛んでくるところか。とにかくユウカのようなボキャブラリーに乏しい人間に褒めらるのは屈辱なのだ。ボキャブラリーに乏しい人間は常に自分がそうである事を意識し続けなければならないのだ!
簀巻きはコーネリアのほうをヒョコと向いてから(と、言ってもどっちが前なのかは足の方向を見なければ判断が難しいところではあるけど)
「コーネリアさん、イギリスには魔法少女とか魔女はいるの?」
こらこら、これ以上痛い事を言わないほうがいいよ。だいいちコーネリアはアメリカ出身、しかもハワイであってイギリスじゃないし。ユウカとおんなじで金髪=イギリス人=貴族出身みたいに思ってんのかなぁ。そして、コーネリアもビックリして唸って考えているじゃないか。
ユウカは頭を抱えて「このバカ妹、恥をかかせて」とでも言いたそうな顔だし。
「魔法処女?ワッツミーン?」
だめだこりゃ。
魔法少女魔法少女はねきゅうべいと契約したら魔女を倒せる力を手に入れるんだよ。ソウルジェムにね、」
「キュウベィ?キュベレイ?ミトコウモン!!」
そりゃ八兵衛じゃん。
「違うよ、きゅうべい。インキュベーターの事だよ」
「インキュ…Incubator?ビジネス用語デスネー」
「もー!」
その「もー!」とか言ってるユウカ妹の頭があると思われる布団の位置をユウカが軽くぽすんと叩く。「いい加減にしなさい」って言いながら。そして「さ、散歩いくわよ」と言って妹(簀巻き)をベッドから車椅子に移し替える。
「キミカ、これ、貸してもらっていいか?」
部屋を出ようとするユウカとユウカ妹の後ろではメイリン魔法少女なんとかのデータディスクを持っている。
「そりゃユウカが良いって言えば…って見るの?」
「いや、ダビングする。売る」
「ダメに決まってるじゃん!」
メイリンはいつも頭の中はお金の事ばかりだな…。