48 ラーメン一郎伝説 1

俺が住んでいる街には「電子部品街」っていうのがある。
コンピュータやらドロイドに関する部品を扱っている店が自然に集まって出来た場所である。
そして東京の秋葉原がそうであったように電子部品や家電、コンピュータなどとアニメ・アイドルモノはとても近い関係らしく、電子部品街にはアニメ関係のお店もある。ケイスケもよくそこに行くしね。
そして、アキバの雰囲気を結果的に真似てしまうのか意図的に真似てしまうのかわかんないけど、アキバにあるような店が地方の店にも出店してくる。例えばアキバにあるアンドロイドが接客の女の子である、メイド喫茶・メイド風俗だとか、頭の中に直接電子データを送って仮想空間を楽しむタイプのゲームだとか…。そんな中で飲食店もアキバからこちらに出店してくる店がある。
「ラーメン一郎」はそんな飲食店の一つ。
マスコミが前にしきりに放送していたのは「行列の出来るラーメン屋、ラーメン一郎」というタイトルだったかな、俺は中身を見てないけど、ケイスケはドヤ顔で「素人がロット乱しするなにぃ!!」とテーブルをバンバン叩いたりしてた。
そして休日の今日の話。
コーネリアが電子部品街に用事があるとかで俺とメイリンは付き添った。同人誌というのを買ってみたかったらしい。薄っぺらい本のくせにやたらと値段が高いアレだ。そして案の定、「薄ッペライ癖ニヤタラト値段ガ高イデーッス…」と小銭がちゃりちゃり言ってるガマブチ財布を寂しい目で見つめていた。
帰りに何か食べていこうかという話になって、飲食店が並んでいるエリアの前に来た。と、そこで俺が見たものは行列。行列。行列。
「Oh!ギョウレツ!」
「キミカ、この行列、何、配給でも始まるか?」
「ちょっと先のほうが見えないな〜。何かのお店に並んでるんだろうけど…開店セールでもやってるのかな?」
俺は行列の最後尾に並んでた大きなリュックを抱えている巨漢、いや、デブに向かって聞いてみた。するとそのデブは俺やメイリンやコーネリアなどを見てから少し鼻で笑って、
「キミ達には関係無い店だと思うよ?フゴッ」
と語尾に豚が鼻を鳴らすような音を立てて言う。
「Oh…」とコーネリア。
メイリンは矛を引っ張り出すと男の首元に狙いをつけて突き、寸止めする。それから、
「関係あるか、ないか、私、判断する」
とあのクールな目で言う。
「ブ…ブヒィィッ!」
男は泣きそうな顔になってから、
「ラーメン一郎の山口店だよぉ…フゴッフゴッ」と言った。
「あぁ、ラーメン一郎かぁ」
「キミカ、知ってるか?」
「行列の出来るラーメン屋、ラーメン一郎って呼ばれてるよ。アキバにもあるんだっけかな。実際はどんなのか知らない。行列が出来るっていうぐらいだから美味しいって事なんじゃないかな?」
「アナルーホドー!美味シイノナラ食ベテミタイデーッス!」
「私も、食べてみたい。ラーメンと同じか?」
「さぁ?どうなんだろ。ラーメン一郎ってお店の名前だからラーメンは売ってると思うけど、普通のラーメンと同じ様な味ならここまでの行列は出来ないだろうねー」
なにわともあれ、ならばなきゃ食べれない。
真っ先にメイリンが割り込みをしようと試みたが俺とコーネリアで止める。どうしてこう中国人って列に並ぶとか基本的な事が出来ないんだろ…。まー、割り込みした気持ちはわかるけどねー。
それから小一時間、行列を並んだ。