46 プレイガールとムッツリーニ 4

メイリンが教室から出て行った後もクラスメート達のヒソヒソ声が相変わらずだった。そしてそれを納めるのもケイスケの仕事である。
「み、みんな仲良くするにぃ。同じ留学生なのにアメリカの留学生とは仲良く出来て、中国の留学生とは仲良く出来ないのは変ですにぃ」
とおどおどしながら言う。言ってる本人もその言葉に疑問をいだいている一人だろうに。アメリカとは同盟国でなんだかんだ言って仲は良い。しかし中国や朝鮮とは古くから色々とあって親の代…いや、親のさらに親の代から色々と言われているのが今の人達なんだからさ。大抵の日本人は中国語を話す人間には「どこの出身か」確認している。シンガポールや台湾などからだと親日だけどそれ以外の聞いたことのない地名が返ってくると…。
「それに先生は結構あの中国人の事は好みかもしれませんにぃ」
これにはクラスメートが一斉に言う。
「それは美少女だからですか〜?」「先生はマゾな女の子が好きなんじゃないの?」「やだ変態がいるわ、臭ってくる」「見損なったよ先生、見損なってたけど、さらに見損なった」「デブ」
そんなクラスメート達の反発さえも苦にしないのがケイスケである。
「だ、ま、ら、っしゃい!!」
白板をバンバン叩きながら吠えるケイスケ。
さすがにビックリする生徒達。
「先生のクラスでイジメは許しません!!」
お、久しぶりに先生っぽい事言ったぞ。
「イジメようなんて誰も言ってないですよ。ただ、仲良くするのは…ムリかな〜って」
とクラスの一人が言う。
「はぁ、確かに…色々ありますからねぃ。でも、戦争をしていたのはキミ達の親の世代。キミ達はメイリンちゃんと一言でも話した事があるのですかにぃ?戦った事があるのですかにぃ…?何も知らないのにただ中国人だからと言って仲良くしないのでは、これから先、キミ達が社会に出た後、本当はとてもいい人なのに、誰かが勝手に貼った変なレッテルのせいで仲良く出来ないのは損な事ではないですかにぃ…」
言ってることはあってるけど、…俺はある程度は事情を知ってるからなぁ。スカーレットの手先なら尚更気をつけなければならないだろうし。
「それにメイリンちゃんはこうやって先生を全裸にしても殺そうとはしなかったにぃ。それはメイリンちゃんが、」
「それはあたしが先生を守ったから助かったわけで」
と俺が話に割って入る。
「キミカちゃんは何もわかってないですにぃ!」
「殺されてからは文句言えないよ?」
「もし殺そうと思ってるのなら、全裸にする前に殺してるにゃん!」
「え?確かに言われてみると…」
メイリンはケイスケを全裸にした後に矛だか槍だかの武器の刃を裏返しにしてケイスケの首を狙った。つまり殺すつもりは無かったという事になる。でも何故全裸にさせる必要があったのか?
さすがにそれはメイリンじゃないのでわからない。
「えっと、つまり、先生はなんだと思うの?」
メイリンちゃんは、真性のマゾであり、サドであるのですにぃ!」
…。
クラスメートは誰一人、ツッコまない。
ボケのつもりで言ったのかも知れないけど「またまたご冗談を」という要素が10%ぐらいしかない。90%ぐらいサドでマゾっていう可能性があるのだ。
「私モソウ思イマーッス!…調教ノシガイガアル牝ブタデス…」
コーネリアは顔を赤くして目を閉じて涎を少し垂らして言う。
「先生がメイリンに苛められるのは別に構わないけどさ、たぶん二人とも存在事態がPTAの苦情の対象なんだからできるだけ誰も見てないところで虐められなよ?この前もブルマ泥棒が来たときなんて真っ先に先生が疑われたしさ、先生が担任をしているクラスメートの一人として、担任が真っ先にブルマ泥棒で疑われるのはちょっとねぇ」と俺がトドメを刺す台詞を言うと、
「フヒヒヒヒッ…任せてくださいですぉ…誰もいない教室でメイリンちゃんとSMパーティを、」
と、その時、まるでそれを聞いた後に入ってきたかのように、教室の扉がピシャッと開くと武器を持ったメイリンが顔を真っ赤にしてケイスケを睨んでいる。
「和豚ァ!!」
片言の日本語で叫ぶとメイリンはケイスケを足払いで転がした後、例の武器を刃がついてないほうにひっくり返して、ケイスケのケツをパンパンと叩く。叩く。ひたすら叩き、
「叫べ!喚け!クソ虫ィィ!!!はぁはぁ…」
と真っ赤な顔をして言ってる。
「こうか!こうされたいか!和豚ァ!」
顔を真っ赤にしてそう言った後、メイリンはしゃがみこんでひーひー言ってる和豚、じゃなかった、ケイスケを自分のほうまで引き寄せると、うしろから耳たぶを軽く唇で挟んで引っ張ったりした。
こいつはおどろいた、ほんとうにへんたいさんがいるぞ。