46 プレイガールとムッツリーニ 1

衣替えでこの学校では冬服から夏服へと変わるとき、生徒全部がガラリとイメージが変わってしまう。
冬服はケイスケが制服を見て選んだというだけはあって、どこかのエッチなゲームにでも出てくるような赤のミニスカートにニーソックス。これも生徒が選べるようになっていて、中には黒のタイツを履いてくる人もいる。上はブラウスに赤のネクタイ、それからブレサー。俺は暑さ寒さに強いので大抵はブラウスにネクタイだったけどね。これが夏になるとイメージが変わり、ミニスカートはほぼ同じだがルーズソックスになる。ちなみに上は白のブラウスと茶色のベスト。
白い女子高生の太ももが沢山並ぶ光景は男ならそれだけでこの学校の近くを通るだけで幸せな気持ちになれるとも噂される。まぁ、夏は暑いからね。ニーソックスやタイツはおしゃれが環境に負ける事を意味するのだよ。
ところで…普通なら新学期が始まってすぐに転校生やら留学生などのご紹介が行われるわけだが、何故だか5月のゴールデンウィーク明けにそれが行われる事となっていて、誰もが「なんかへんだよねー」なんて言い合っているクラスルームの中で俺だけはその理由を理解していた。
コーネリアが日本の、しかも俺がいる学校へと転校してくる。
これは本人が望んだ事ではないだろう。どこから力が働いてるのか…果たして日本政府は、軍は、これをどれだけ把握しているのか?俺にもまだ色々と疑問が残っているが、それでもクラスメートの…いや、学年の誰よりも今日の転校生について知っているから、少しだけお得感。
ホームルームではケイスケが来る直前までその話題で持ちきりであって、俺も「アメリカからの留学生でしょ?」みたいにちょっと知ってます的な何かを漂わせながらユウカやナノカの反応を楽しんでいた。特にユウカは何故かアメリカ的なものを勝手にイギリス的なものとして勘違いしていて、アメリカには金髪の美少年の貴族みたいなのが居てとか言ってるが事実を知ったらコイツは度肝を抜かされると思うな。
イギリスもその他ヨーロッパもアメリカは「ヤンキー」という風に少し異質なものを見るような目で見ている。自由の国アメリカはヨーロッパやアジア各国から、そこに住んでいた保守派層が嫌になって出て行った多くの移民によって形成されている。つまり、ヤンキーであり、不良であり、バカであり、自由である。そういう人達の子孫であるハワイ出身のコーネリア・マクリントックは日本に着てすぐに中国からの不審船と戦闘を行って、キレて、アメリカの駆逐艦を1船ダメにした。アレを見てると本当に自由だな、なんて思ってしまう。俺がもし同じ事をやったら…ってまぁ、コーネリアとその上司との関係のようにギクシャクはしてないから少し違った展開にはなるだろうけど、きっと軍からの監視がしつこく俺の周囲に取り巻いていた事だろう。
さて、ケイスケの後ろに留学生らしき影があって、それが教室に入ろうとしているので、コーネリアの自己紹介でも拝もうとするかな〜?
などと、俺は周囲のクラスメートよりも事情を知っているので少し落ち着いてその様子を眺めようと思っていたわけだけど、ここへ着て、俺もまた周囲のクラスメートと同じように驚かなければならない事態になった。いや、周囲のクラスメートのレベルではない…。
一人はコーネリア。
問題はもう一人。
俺の目が腐っていなければ、コーネリアの後にもう一人女の子が付いてきてる。しかも黒髪。そして噂だと、今日転校してくるのは両方外国人…。俺はまさかと思ったわけだが、教室の扉が開いてケイスケが中に入ってきて、残り二人が登場したらもう僅かな期待も無くなった。
…。
もう一人…黒髪の美少女は…。
メイリンだった…。