45 コンセプトモデル 6

「ヘイ、キミカ!オ友達ナノデスカーッ?」
「まさか!敵だよ、敵。エネミーッ!」
俺の背後にコーネリアが降りてくる。
「お前の刀、弱い。ビーム防げない。雑魚。おしりかじり虫」
その中国人は俺に向かってそう言う。
「自己紹介は終ったかしら?」
とスカーレットはニヤニヤしながら言う。
「そのおしりかじり虫の名前を教えてよ、みそじ(三十路)…いや、よんじゅうろ(四十路)…、いや、ごじゅうろ(五十路)おばさん!」
と俺は挑発。
「よそじ(四十路)、いそじ(五十路)でしょ、日本語でOK。国語の成績が低いくせに難しい言葉を使うからそうやって『罵倒に失敗』っていう一番恥ずかしい目にあうのよ。ばーか」
「うわああああああ!!!ムカつくゥゥ!!」
俺は頭を掻きむしった。
国語の成績が悪い事を何で知ってるんだこのババア。
「えーっと(中国語でおしりかじり虫に名前を聞いている)。メイリンだそうよ」
「お仲間なんだから名前ぐらい知っててよ…」
「オシリカジリ虫…ワッツミーン?」
えーっと、おしりかじり虫を英語で言うのは…えーっと…。
などと俺が考えている間にスカーレットとメイリンは逃げていく。
…って逃げるのかよ!…しかし俺もコーネリアもそれを追いかけなかった。なんか疲れたし、おしりかじり虫を英語にするとどうなるのかなどと考えていたからだ。
拿捕した船からは生き残った船員が次から次へと出てきて海保に手錠をかけられる。そんなところへと俺とコーネリアは降り立つ。
コーネリアが首にかけていた十字架に軽くキスをすると黒い煙が身体を覆って服が学生服へと変わる。それからリボン付きのツインテールも無くなりボーイッシュなショートヘアーへと変わる。ただ可愛らしくもツインテールの時に付けていたリボンの小さいバージョンが左右の髪の先端近くにちょこんとついている。
これもアメリカ人のセンスではないな…きっと日本のアダルト系ゲームに出てくるヒロインの誰かを真似たものだ。
で、なんか見覚えがある学生服だと思ったら、それは俺が通っている学校の夏服だ。
「げ、コーネリア、あたしと同じ学校なの?」
「Oh!ソウダッタノデスカ!」
俺も変身を解いた。
コーネリアと同じく黒い煙が身体を覆って服が変身前のもの…つまり学生服(夏服)へと変わる。髪は黒からクリーム色へ。花の飾りの髪留めもケイスケがどうしても付けて欲しいと最初から言ってた奴である。
それを見たコーネリアは
「日本ノJKノ制服モアメリカンスクールノ制服ト同ジデエロカワデーッス!」と言って喜んでいる。
そういえばさっきからどうやっておしりかじり虫を英訳しようと考えていたんだけど、一つだけとても似た表現が海外の映画の中にある。
「おしりかじり虫の英訳が分かったかも?」
「ワッツミーン?」
「『ケツにキスしな』」
「Oh!!『ケツニキスシナ』!!!大好キナ言葉デースッ!」
好きなのかよ!
その後、コーネリアは再び軍の上司と何やら通信(喧嘩)を始めだした。ケイスケとナツコが強襲艦で海保の船の甲板に降りてからもずーっとそんな感じだ。
「あれがアメリカの新兵器ですわね」
「なんかあたしと同じコンセプトで作られたっぽいよ?」
「そうですわ。彼らは意味はわからないけど、とにかく同じコンセプトで作らなければならない、そう思って作ったのが彼女です。だから彼女は中身はキミカさんと同じ、男性ですわ…」
「マジで?!」
「…あのロリロリな衣装も顔も、金髪のツインテールも、アニメ声も、米軍が『そういう風に作ったらキミカさんと同じ性能になるのだろう』って考えて一生懸命作り出したのですわ。コンセプトは同じですが、わたくしの技術とお兄様の技術とはかなりひらけていますわ…」
その横で腕を組んで「うんうん」と頷きながらおとなしく話を聞いていたケイスケも最後は「ですねぃ」と締めた後、
「まだまだキミカちゃんの技術の核心には触れていないですぉ。まぁ、それは仕方がない事。アメリカのディズニーは何百年経ってもディズニーとしての誇りというか、変にプライドがあるのか萌えを見いだせないでいますぉ。アメリカ人が萌えを社会として受け止められなければ、何も始まらないのですねぃ」
って一体何の話をしてるんだこの人は。
「でもさ、拉致監禁されて改造人間にされたって言ってたよ」
「そ、そこまでコンセプトを同じにしたのですわね…きっと病院に入院していた再起不能な患者を連れてきたのですわ…」
「うわぁ…」
なんか俺と同じ運命を送っているコーネリアが可哀想になってきた。