45 コンセプトモデル 5

コーネリアが水面を跳ねる。
それは昔俺が河原で平べったい石を投げて水面をそれが跳ねてどこまで遠くまで飛んでいくかを一人で遊んでいた記憶をふと思い出させた。あ、ごめん、コーネリアさんが大変ですね。
スカーレットは自らのバリアで相手のバリアを中和させて肉弾戦に持ち込むタイプだ。だからコーネリアが奴のパンチをまともに喰らったとき、俺の目の前でバリアが中和されたのを確認した。そしてそのまま衝撃波と一緒に吹き飛ばされて凄まじい水しぶきをあげ、水面を転げるツインテールの美少女。
再び水しぶきがあがったのはコーネリアのグラビティコントロールが動いたのだろう。体勢を整える為に反対方向へと発動される重力はでより一層強い水しぶきがあがって、コーネリアは身体のバランスを整えた。そして、
「ゴオオッッドデェェェェッム！！」
とブチ切れる。
そのまま身体を回転させると風にふわりと金髪のツインテールがなびく。だがそれが彼女の攻撃の合図のようだ。キラキラと輝く光の粒が髪の間から空を舞うと、それがミサイルへと実体化していくのが分かる。俺の持っている武器リストっていう自分でもいまいち仕組みが分かっていないけど、あれと同じ様な感じで周囲の空間から武器や弾薬が生成され、それを放っているようだ。
久しぶりに見るスカーレットは前とは進化している。水面を歩いてる。いや、水面に少しだけ浮かぶような装備をしているのだろうか。ミサイルを前に、前面方向に回転蹴りをすると水しぶきが高圧に吹き出たようになり、コーネリアの放ったミサイルを爆発させた。
まるで水のバリアだ。
隙が出来たスカーレットの背後から俺の蹴りが飛ぶ。
寸前で奴は組み手で蹴りを防ぐ。
だが近距離での組み手は修行中の俺のほうがレベルが上だ。
俺は奴のパンチを心眼道の構えで軽々と交わしながら、次から次へとカウンターも含めたパンチとキックを叩き込んでいく。スカーレットのようにバリアを中和させるだけの特殊な能力は俺には無いがカウンターによる敵の攻撃の反作用と力点のコントロールは奴のバリアを削ぐのに苦労はしない。それぞれの打撃が当たるのに合わせて
「お」「ひ」「さ」「し」「ぶ」「り」「で」「す」「ね」
と挨拶を放った。
「このクソ小娘！！なんでアンタがいるのよ！」
スカーレットは額に血管を浮き上がらせながら怒鳴る。
やっぱり女だね。すぐに怒る。本当にどうしようもないぐらいの感情のブレだよ。これがなければ少しはまともに戦えるものを。
「姉妹品もいるよ〜！」
さらに俺は挑発。コーネリアを紹介する。
「ああもう！今週はとことんツいてないわ！」
姉妹品、いや、コーネリアが再びミサイルを放って、スカーレットが舌打ちする。俺も巻き添えを食らいそうなのでそこから離れる。水しぶきと爆風がそこら中にあがる。
「殺った？！」
さすがにアレを喰らっては木っ端微塵だろうに。
と、その時、水しぶきの中から青い光が俺に向かって飛んでくる。俺はとっさにブレードでそれを弾こうとしたが、それが弾丸なら弾けていただろうに、想定外な事にそれは弾丸ではなく高エネルギーの何かだった。俺はまともに喰らったらヤバいと思ってブレードを締まって回避。しかし、ギリギリでバリアを削ぎ落とされそうになる。
「レーザー？」
スカーレットってレーザー兵器を装備してたっけ？
だが、その答えはしばらくすると出た。
スカーレットの前に立ってるのはさっきのチャイナドレス風の戦闘服に身を包んだ女の子だ。年齢は俺と同じぐらい。背は俺よりも高いかもしれない。ポニーテールの黒髪で目は大きくも鋭くて、そして赤い。チャイナドレスからは白くて大きな俺好みの形のいいおっぱいが谷間をのぞかせる。そしてチャイナドレスの裾から見えてる白くてすべすべした肌。まさに中国人の美人をアニメ補正したような感じである。
スカーレットと同じく、水面に立っていられるような装備を持っているらしい。という事は、この女の子は俺と同じ様なコンセプトモデルではないのかな。コーネリアと俺がグラビティコントロールで空が飛べるのに対して、チャイナドレスの女の子はスカーレットと同じく空が飛べないらしい。
えっと、中国語で挨拶はなんていうんだっけ…。
「に、にーはお」
俺はその女の子に向かって礼儀正しく挨拶をする。
「ニーハオ」
その女の子も礼儀正しく挨拶をする。
その後に何か中国語で言ってるが俺にはさっぱりわからないし、しかも英語と違って「あいきゃのっとすぴーくいんぐりっしゅ」が使えない。しかしモノは試しなので、
「あい、きゃのっとすぴーく、ちゃいにーず」
と言ってみた。
通じた。通じたのか？
その女の子はちょっと不慣れな日本語で、
「よう、クソ虫」
と言った。
隣でスカーレットが笑っている。
「クソ虫！！！いいね！！」
俺がその程度の挑発に乗せられると思うのかよ。俺の感情を揺さぶろうったてそうはいかないぞ？スカーレットと違って挑発にはのらん！なにせ俺は外側は女の子だけど中身は男の子なのだ。
女のつもりで話しても無駄。
「クソ虫！ウジ虫！おしりかじり虫！！」
このやろう…知ってる日本語を並べばいいと思ってるのかよ。
最後のは罵声じゃなくて曲名だぞ。作曲者に失礼だろうが。