45 コンセプトモデル 1

もう梅雨なのかとても清々しくない朝を迎えたある日。
ケイスケの元に軍からの連絡が入り何故かナツコまで一緒で3人が南軍管轄の九州にあるとある空港へと向かう。俺は事前に軍から言われたとおりドロイドバスターへと変身してから空港で飛行機を待つ。
民間機の出入りが制限された空港。離陸出来なくなった旅客機を恨めしそうに見ている人達が居る。そこで軍や警察がうろちょろするものだから戦争でも始まるんじゃないかと視線は俺達に集中しているようだ。強襲艦(アサルトシップ)と呼ばれている無重力装置がついた真っ黒のボディの航空機、高高度偵察機の紫陽、村正と呼ばれているドロイドタイプの戦闘機が数機、離陸待機中だ。
そんな中で、戦闘指揮官でもあるミサトさんが俺達に説明している。
「本日早朝5:24、関門マーチスが未登録の貨物船を確認。拿捕しようと試みたんだけど貨物船に偽装した高速船である事を確認したわ。海保の船を降りきって現在周防灘東を航行中。これに対して海保と南軍が動くことになったのだけど、アメリカも介入することになったの」
「なんでアメリカが出てくるの?」
「偵察用の機体を試験したいそうよ。実戦でね」
「へぇ〜…」
「キミカちゃんの役目は海保と軍が高速船を拿捕するのをお手伝いする事と、アメリカの試験機の動向を観察すること」
「二人は何のために一緒に来るの?」
俺が気になっていたのはそこだった。なんでケイスケとナツコが作戦に同行するのか?
「あー、それはね…」
ミサトさんが説明しようとした時、ナツコが割り込んで言う。
アメリカの試験機が何なのか確認する為ですわ。わたくしがハワイの研究所に囚われていた時に開発を手伝っていた…いえ、手伝わされていた機体である可能性が高いのです」
「ナツコが開発したドロイド?」
「え?」
「あぁ、時間よ」と急かすようにミサトさんは二人を強襲艦に乗せる。俺は俺でこの無重力装置付きの強襲艦よりも早くに現地に行って、そのアメリカ軍の試験機というのを拝んでくる事になっている。
ナツコに聞いた時の反応がちょっと気になる。詳細に説明するのを嫌がっているような、まるで話を逸らそうとしているような、そんな感じだった。
そして数分後。 周防灘沖。
俺は視界に貨物船らしきものを捉えた。
その上では民間人って格好をした武器を持った連中が居る。そしてドロイドも数体居て貨物をどかしている。この船を偽装して武器を隠すための貨物…という事なのだろう、何故ならどかせた貨物から高射砲、ファランクス、対空ミサイルなどなど…戦艦にも搭載されているような武器が沢山詰まれているわけで…。こういう偽装をして戦闘行為をするって言うのはずーっと昔から中国軍がよく使っていた手だ。国旗やどこの部隊に所属しているのかの認識は出来ないけども偽装していると中国軍だとみてほぼ間違いないだろう。
浅瀬と島の間から海保の高速艇が顔を覗かせている。これだけの重装備をしている船を相手に本気で拿捕しようと思ってるんだろうか。
『えーっと、こちらキミカです』
『高速艇「朝顔」の船長、宮藤です。これから拿捕に向かいます』
『今貨物船が偽装を解いて装備を展開してます。高射砲にファランクスに対空ミサイル…重装備です。本当に拿捕するんですか?』
何か他の人と話している声が聞こえてから、
『了解しました。南軍の支援を待ちます』
その後、『朝顔』は島の影に隠れた。
十分に武器を展開した貨物船はそれだけで抑止力になっているようだ。でも日本の海域、しかも四方八方島々で囲まれた瀬戸内海で堂々と武器を展開するって、この船は決死の覚悟で来てるのかな?
その十分に武装している貨物船に近づく影がある。
アメリカの駆逐艦らしき船。貨物船よりも小型だ。
それがまるで挑発するかのように貨物船の遙か右側を並走。貨物船の上にいる乗組員が消えている。こりゃそろそろ中国側は火を吹くぞ。まぁそれが挑発する目的なんだろうから俺はさらに高度を上げてからアメリカさんと中国さんのやり取りを見ていた。
中国側、挑発に乗ってミサイルを発射。10メートルぐらい上空に上がった後、その光輝く対艦ミサイルは海面スレスレまで降りると、水しぶきを上げながら超低空で並走を試みてるアメリカ軍の駆逐艦に飛んでいく。
駆逐艦側はそれにファランクスで応戦するんだと思っていたら、船の後方に水しぶきがあがった。新手のミサイル防御装置なのかな?と俺はその動向を見ていたら、その水しぶきの戦闘にはミサイルでも何でもなく、女の子…。
え?女の子…だよね?
その女の子は金髪でツインテールの髪、それから黒い服…というより、これはワンピースタイプのドレスなのかな?それを着ている。
これは一体何の冗談なのでしょうか…。