44 メモリー・パッチ 5

「ふぅ…。と、とりあえず、キミカちゃんの全ての記憶を抽出完了ですぉ…」
ケイスケはぐったりしている。
俺は全然幽霊を見てないのに、何が映ってたのか気になるのに、モニターが見れない。モニターを見たクラスメート達とケイスケは「幽霊?あぁもういいよ、見飽きた」的な雰囲気になっている。
「ちょっと後から全編ダイジェストに編集してから見せてよ。ちゃんとプロローグ・エピローグとか解説とか入れて、重要なシーンはリプレイも入れてさ、『おわかりいただけただろうか』とかトーンの低い声で語り部さんに言わせてね」
「えー、面倒臭いですぉ…あぁー眠くなってきた」
「おい!」
「まぁとりあえず抽出したから、後はこれをビッチさんとペチャパイさんとクソ妹の脳みそにぶち込めば…」とポチポチとスイッチを押した後、寝転がされてる3名の俺の友達の頭の中に俺から抽出したデータが転送されていく。
「これで治るの?」とクラスメートの一人がケイスケに聞く。
「あー、うん、治る治る〜」
くっそ適当に答えるケイスケ。
その作業を終えてから小一時間経過して、目が覚めたナノカ、ユウカ、ナツコの3人が病院の待合室へとやってきた。
「あれ?みんなこんなとこで何してんの?」
というクソ無神経な言葉を放つのはナノカだった。
「ナノカ!!」
とクラスメート達はナノカの元へと、それからユウカの元へと駆け寄ってきて抱きしめたりする。感動のご対面という感じである。ケイスケはもうさっさと家に(じゃなくて学校に)戻りたいという感じで病院の外で待機しているようだ。
「キミカさん…」
俺が振り返るとそこには正気に戻ったナツコの姿がある。
「あ、ありがとうですわ…わたくし、ずっと夢の中にいたような気分ですわ。これで助けられたのは2度目ですわね」
「あぁ、いいってことよ〜。お礼なんて身体で払ってくれたら」
「え?か、か、か、身体で払うのですか?!」
「うへへ…(白目」
あと一人、忘れているような気がするけど、とにかく一件落着してよかったよかった。
…。
…。
…いや、確かに忘れてるぞ。そして一件落着してない。
メイはどうなったんだ?霊障とやらになってるんじゃないのかな?
俺は急いで病院の外に出るとケイスケに言う。
「メイがまだ治ってない!」
「メイィィ?」
ケイスケが答える。
「えっと、一緒に飲み会をした時に居た女の子だよ、ちっこくてペチャパイの」
「あぁ、キミカちゃんに抱きついたりしてきたレズですかぉ?」
「そそ」
「あーまんどくさいぉ〜」
「あと一人だから!」
「じゃあそのメイって子をここに連れてきてくださいですぉ…」
耳くそをほじりながらケイスケが言う。
しょうがない。最後の一仕事だ。
俺はドロイドバスターへ変身した。
寮長さんの話ではメイの様子が明らかにおかしくて逃げようとするのでロープで縛っている、そして悪魔祓いでも予防か検討しているとの事だった。気になるのはナツコやユウカと霊障の表れ方が違うところだ。同じ霊障だったら逃げようとするよりか、ぼーっとして虚ろな目をして動かないはずだ。
女子寮に到着。
洋風の豪華な作りの廊下を進むとメイの部屋が近づいてくるたびに変な声が聞こえる。まるで動物の唸り声のような…。動物?
「がるるるるるるるるるるるるるるる…」
うわ、これはひどい
明らかにメイの声だ。
俺は急いで部屋に駆けつける。
扉を開ける。
そこに居たのは…。
「うがああああああああああああああああああああ!!!がるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる!!!!わん!!わん!!!!わんわんわん!!」
犬の様に吠えているメイの姿だった。