41 妄想の証明 4

「そういう反応を女の子にされるのが嫌だから僕は最初に言ったんじゃないか!」と、俺の「うわぁ…」の後の台詞に対する反発をする武井。
「まぁまぁ、落ち着きなさいよ」
「もうちょっと解析したら何をプレイしていたのか判るんだ…そうすれば…」
「何をって…その恋愛ゲームじゃないの?」
「それはそうなんだけど、この恋愛ゲームはヒロインが7人出てくるんだ。その中の一人を選んでストーリーを進める。だから戦車のAIがそれに影響されて動いているのなら、どのストーリーをプレイしていたのかで何をしようとしていたのか判る」
「でも最後は…エッチシーンに突入するんでしょ?」
俺は口を手で抑えながらニヤニヤして言う。
と、ここで通信が入る。
『どうだ?止めれたか?』
ハラマキの声だ。
『いや』
『だろうな。上空から見る限り戦車のコックピットに君と武井の姿が見え、戦車は停止していない。何があった?』
俺は今武井から聞いた話をハラマキに話した。
『戦車のAIが成人指定のゲームをプレイだとぉ?!』
どうやらそれは通信だけでなく、ハラマキは声にも出していたらしく、所長の声も紛れて入ってくる。例えば…「会社のパソコンを使ってそんな卑猥なゲームをダウンロードしていただと?!武井!貴様ッ!!」とか。
「武井さん、所長がブチキレてるよ」
「うぅ…もう終わりだ」
「ま、これで戦車を止めれば武井株も上がるんじゃないの?」
つか、会社で違法な行為をしていた人がいつまでも居られるのも、これだけ凄い戦車を作ってしまうぐらいの技術力があるからなんだろうな。
戦車は高速道路のICに入った。
ハラマキさんはそうとうな権限がある人らしい。高速では車は一台も走っていないし、マスコミの報道ヘリも周囲をうろつくこともない。普段なら南首都の近くの道路だから渋滞しているはずなのに、すっきりした海外の映画にでも出てきそうな広い4車線の道路を戦車がスイスイと移動する。
『このままではいずれ戦車は市街地に侵入してしまうだろう。被害を出してしまう前に壊せないか?』
ハラマキからの通信だ。
『もう少し待てないの?』
『ん?何故だ?』
『エッチゲームをやってた戦車のAIが戦争をしに行こうと考えてるとは、ちょっと考えられないから』
『確かにそうだが…ではどうすれば止まるというのだ?』
俺は武井に、
「ねぇ、どうすれば止まると思うの?」
と聞いてみる。
武井は戦車を見下ろしながら、まるで我が子の健闘を見守る親のような目をして、
「目的を達成すれば止まると…思うよ。恋愛ゲームの結末のように」
そう言った。
『目的を達成すれば…あるいは』
『ふむ…』