41 妄想の証明 3

ヘリは戦車の先へと進み、トンネルの上空で待機した。
最終的な目的地は分かっていないが、今の進路だと戦車はここを通り過ぎる予定なのだ。
「もう少し上空がいいわね。戦車の射程距離外へ上昇して」
ミサカさんのボサボサの髪が風に煽られてさらにボサボサになる。
「そろそろ下に戦車が来ます」
ヘリのパイロットが言う。
「キミカちゃん、変身しなくていいの?」
「大丈夫」
俺は変身しないままヘリから落下。の途中で変身した。
真っ黒い煙が俺から拭きでて、煙を抜けるとそこには俺がいるわけで、そのまま戦車の上空へ急降下。もちろん、戦車も上空に敵対する勢力が来たわけだからファランクス(対空機関砲)を撃ってくるわけで、俺はその弾道を全て見切ってグラビティブレードではじきながら戦車を射程距離内へ侵入、そして至近距離でショックカノンを撃ちまくってバリアを破壊し、今度は戦車の上部の鉄板をブレードで引き裂いた。マヌケな運転手が座っているコックピットが露出する。
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
このマヌケな叫び声をあげてる奴が武井って呼ばれてたWinnyで違法ダウンロードをしていた野郎か。
「観念しなさい!!そして安らかに眠れ…」
「ひーッ!!待って、待ってください!!」
「はぁ?」
「戦車を止めなきゃ」
「止めなきゃって、キミが動かしてるんでしょうが…」
「ち、違う。僕じゃない」
「え?」
武井はノート型の端末からコードを複数伸ばして、戦車のAIと思われる箇所に繋いでいた。そしてわけのわかんないプログラムのソースがそのノートには開かれている。つまり、戦車が暴走していて、武井はこれを止めようとしてたわけか。
「でもAIが暴走してるんだから、もうぶっ壊すしかないんじゃないの。っていうか、所長のハゲが戦車をぶっ壊してついでに武井も殺していいよって言ってたよ」
「そ、そんなぁ…」
戦車は俺がバリアを破壊してからは俺に対する攻撃をしようともせず、よくわかんないけど一心不乱に戦車が目指す目的地へと向かっているようだった。俺はコックピットのへりに腰を掛けてよくわかんないプログラムのソースを眺めた。
「僕がWinnyから違法ダウンロードしていたのは事実だよ…でもだからって殺そうだなんて」
「いや、所長はキミが戦車乗っ取って街で人を殺そうとしてるって思ってるみたいだよ」
「…そんな事するようなタマに見えるのかい?」
「いやぁ、怒らせたら大変な事をしでかす人って総じて普段は大人しいっていうじゃん。キミみたいなさ」
「しないよ!僕はそんなことしない」
「で、なんで暴走してるか目星がついてるの?」
武井はモニタを指出していくつかの表示を切り替える。よくわかんないけど、AIが何をやっているのかをパターン表として表示する画面が現れる。それを見ながら武井が説明する。
「今解析した限りだと、どうやらWinnyで違法ダウンロードしてきたゲームをプレイしたみたいなんだ」
「戦車のAIがゲーム…大戦略でもしてるの?」
武井は顔を赤らめながら、メガネをくいっと押し上げて、
「そうじゃなくて…その、あれだよ、大人の」
「大人の?」
「き、君は、そういうのを知るには早過ぎるよ!」
む。説明してくれなきゃわかんないだろ。
「よーし、戦車と武井のどっちを先に切断しようかな?」
と俺は立ち上がってグラビティブレードを引っ張り出すと戦車と武井のそれぞれに向けた。
「ま、まままま、待った!わかった!わかったよ」
「で?」
「戦車AIがプレイしてるのは…その…恋愛ゲームだよ。成人指定の…」
「うわぁ…」
ドン引きぃ〜。