40 劇団水泳部のトップスター 1

「あのー、一つアイデアがあるんだけど」
一斉に部員達の目が俺を見る。
キャプテン水口が俺に向かって「ん?何だ?」と問う。
「えっと…ようはさ、美男子がいなけりゃ美男子を作ればいいんじゃん。美男子っていうのは美形だったら例え中身が女でもいいし」
「なるほど、藤崎が男装するって事か」
「いやいやいや、あたしだったら背が低いし胸もあるし。男装に相応しいのは胸が無くてクビレも無くて…つまり、少年の様な身体つきをしている人じゃないとダメだよ」
と、俺はその視線をナノカに向ける。
「おーい!!!」
部員達の視線が一斉に集まって焦るナノカ。
そしてそこに俺が一言、
「ナノカ適任」
「…た、たしかにあたしは胸全然ないけどさ!!」
キャプテン水口は、
「なるほど…その手があったか」と本気で考えている。
それから続けて俺は、
「それに部員の中でレズなのもナノカだけだし」
「まてーい!!」
「いや事実だし…」
「それならキミカっちもレズじゃんかよ!」
「おっぱいのあるほうのレズです…」
女子部員からはヒソヒソと声が聞こえる。
「適任かも…」「っていうか見てみたいかも」「それはそれで興奮するような」「あぁ、やばい、頭の中にナノカの男バージョンが浮かんでは消えている。好きになっちゃったかも」
そんな声を聞きながら、ナノカは何か考えていたのだけれど、はっと目を見開いて、
「そうか…その手があったか」
と言った。
どの手…?
「やるよ!!あたし、男になる」
「おぉ、やってくれるか!」
キャプテン水口も喜んでいる。
「男になったらあんな事やこんな事を…フヒヒ」
…やばい事を教えてしまったかもしれない。