38 ◯◯の妻 5

「あぁ、どうぞどうぞ」
と、俺は自分の部屋(ケイスケとナツコの部屋の中間)の扉を開け、ようとした。
「うわああああああああああ!!!」「きゃあああああああああああああ!!!!」
ケイスケとナツコが二人して叫び声を上げる。そして俺の動きを制止するように手を伸ばしたっぽいのだが、もう手遅れ。
なんだよ?もう開けちゃったよ。
…。
目の前に積み上げられた様々な何かがあって、それが俺に襲いかかるかのように…。
雪崩が起きた。
雪ならよかった。けれどそこにあったのは厄介なものばかりだ。アニメグッズとホラーやら呪物のグッズが俺を巻き込んで襲いかかってきた。俺は辛うじてそこから這い上がり、
「な、な、なんじゃこりゃー!!!」
と叫んだ。
こいつら…自分の部屋のモノを俺の部屋に置いていやがったのか!どおりであれだけのものが物置やらトラック無しに家から忽然と消えたわけだよ!!
「な、なんだこれは…アニメに猟奇モノのホラービデオ、抱き枕にオナホール、青年向けのアダルトアニメゲーム、レイプモノのビデオ…血のついたシャツ、肉片がこびりついたバール、人を象った藁人形、血のついたアイスホッケーマスク…サイコパスも真っ青な品揃えだぞ!!!一体どういう人間なんだ!!」
その怒声にビビリまくるケイスケとナツコ。
たとえそれらの所有者が俺だという事になっていたとしても…。いや絶対に俺なわけないんだけどね。…仮にそうだとしても、そんなフィアンセを家の中にかくまっている二人にも厳しい視線が向くのは当然だった。
「はわわわわ…」
「(ガクガクブルブル)」
ケイスケとナツコは真っ青な顔でおしっこを今にでもチビリそうになっている。お父様は俺やケイスケ、ナツコに鬼の形相ってこういう顔を言うんだ〜、マジで鬼だね〜って顔で睨んでいる。
しょうがない。
この状況を打破する為のかくなる手段を俺は準備している。
俺はお父様の仕込み刀に手を伸ばし、それを引っ張り出した。
その瞬間、やはりと言うべきか、周囲にいた黒服(今度は裏切り者ではないほうの)の連中が一斉に俺に向かって銃を向ける。そこで俺が動いているもんだから、躊躇なく銃弾を撃つ。
が、そんなのは無意味だ。
俺はグラビティコントロールとお父様の仕込み刀だけを使って全ての銃弾を弾き(0.024秒)、黒服どものハンドガンを全て真っ二つに切り刻んで使い物にならなくして(0.027秒)お父様の首もとにその刀を突きつけた。
「!!!」「!!!」
ケイスケとナツコが何故か歓喜の目で俺を見る。
黒服達の間に緊張の空気が漂う。
俺は刀をお父様に突きつけたまま、
「…秘密が知られてしまったからには…生きて返す事はできんなぁ?」
とドスの聞いた声で言い放つ。
空気が張り詰めたようになる。
お父様も、こういう経験は何度もしてきているはずだ。だが、ここで屈するだろうか?テロリストに襲われて余裕をぶっこいていた人だぞ?
しかし、お父様の頬には一筋の汗が流れた。
「ぬぅぅ…ま、まいった。この事は口外せぬ。だから命だけは助けよ…」
俺はニヤリと笑った後、お父様の仕込み刀を鞘に投げつけて、鞘にすっぽりと収めた。それはお父様に武器は返したが、いつでもそれは俺が取り出すことが出来、そしてボディガード達もろとも殺せる事が出来る事を意味していた。
「瞳の奥に修羅が見える…武の心得があるものだけに宿るという修羅だ。ケイスケよ…とんでもないおなごをフィアンセにしたのぅ…」
いやぁ…それほどでも。