36 お泊り会 in Tokyo 3

最初に前菜と先ほど注文したお酒が届く。
大きなお皿の上にちょこんと盛られている何かよくわからないソレ(オレンジ色の液体がカラーを加えている)を前にして固まる俺とユウカ、ナノカ。
「…えっと、これは何かしらぁ?」
とユウカ。
「ぜ、前菜ですわ」
とメイ。お前も知らないのかよ!
ちなみに、お酒はそれぞれボーイが名前を言いながらテーブルに置いていったのだけど、理解できる名前じゃなかったので頭に残らなかった。ユウカ、ナノカ、メイのところには赤、白などの色があるワイングラスに入った飲み物が置かれたんだけど、俺のところにはどう考えてもウイスキーグラスにしか思えないものに大きな氷と黄色の色の液体が注がれていた。
「お、おねえさま、さすがですわ…食前酒にウイスキーだなんて」
やっぱりウイスキーか…梅酒である事を少しだけ期待したけどダメなのね。
「ふっ…あたしの燃え滾る情熱を消化するためにはワインだなんて生ぬるいものじゃダメなのよ。残念な事にね」
と格好をつけてみるが、香りを嗅いでみて明らかにキツそうなお酒である事はわかる。ちなみにウイスキーなんて飲んだことないよ。
「残念なのはあんたの頭よ!最初からそんなの飲んだらとんでもない事になるわよ!」
などと止めるユウカを前に俺が少しだけそのウイスキーとやらを口に注いでみた。
「げ、飲んだし」
「ん〜…口の中に広がるのは木の爽やかな香り、それから僅かな甘み…そして喉に通り過ぎる熱い液体。これはすばらしいウイスキーですね」
などと評論家ぶってみる。
「飲ませて飲ませて〜!」
そう言うのはナノカ。この3人の中で至って楽観的に現実を受け入れるキャラである。
「げッ、くッさ!まっずッ…」
そしてストレートに意見を言うのもナノカであった。
ナノカは酷評してるけど、これは別に悪くないけどな。あぁ、味の感じ方が俺の場合は『男モード』なのかも知れない。女だと甘いモノが好きで男だと(俺も甘いものは好きだけど)辛いモノが好きと言うからね。
俺は前菜が程よい甘さとさっぱりさでとてもウイスキーに合うねぇ、などと真っ赤な顔をして言いながら2杯目を終えた。