35 シークレット・ミッション 8

コンビニに到着。
俺はさっそく手続きをした。
恥ずかしい抱き枕もアキバのコンビニではなんとなく恥ずかしくはない。けれどもさっきのカメラ小僧達ではない一般人ですらも俺のほうから目を逸らさなかった。ここではコスプレイヤーがコンビニに言っただけでこれだけ注目されるものなのかな。普段からそういう事は行われてそうな気もするけども。
やっとお荷物は無くなった。
しかしここで変身を解くわけにも行かないな。
コンビニのトイレを拝借しようか。
などと思っていると、俺の足のブーツの部分に何かの感触がある。見下ろすと小さな女の子が俺のブーツを掴んで居て、「どろいどばすたーきみか、サインください」と言っている。母親がその後ろから慌てて追いかけてきて、女の子を抱き抱えると「すいません。こら!迷惑でしょ?」と女の子の頭をポンと叩いた。
こんな小さい女の子でもニュースか何かで俺の事を知ってくれていたのか。人気者だなぁ…キミカは。
「いいですよ」
まぁ、サインするくらいなら。どうせコスプレイヤーもサインをしてるわけだろう。俺のフリをしてさ。このアキバでは俺のコスプレした人がしまくったサインが出回ってるんじゃないのかな。それにネットオークションで高値がついたりして…。
「いいんですか!」
と驚く母親。
「どこにサインしたらいいんですか?」
「あ、えっと、この子のバッグに」
どこにサインするかは決めてたのか。
「何か書くものは…?」
「あ、えっと、あー持っていません、ちょっと買ってきますね」
普通にマジックでサインするのもちょっと芸がないなぁ。
「あ、いいですよ」
そう、偽物には出来ない俺だけのサインをしてあげよう。ふふふ…。
俺はグラビティーブレードを引っ張り出すと、女の子のバッグに「キミカ」と切り刻んだ。(0.0012秒)
「ああ…あ…」
「どういたしまして」
そしてグラビティーブレードを収納した。
「わーい!ありがとう!!」
女の子は俺に握手を求めてきて、俺はその小さい手をつかんだ。
ふとコンビニの中を見渡すと、全員が俺のほうを見てレジ係も仕事を止めていた。
「さてと…着替えてもどるかな」
トイレで着替えてホテルへと向かった。
任務完了である。