35 シークレット・ミッション 7

俺が店を出た瞬間だった。
「おぉぉ!」
という歓声が上がって、俺の周囲の人集りが円になって俺を囲み始めたのだ。その中にはユウカ達もいる。
カメラのシャッター音が響きまくる。そして「視線お願いしまーす!」「ポーズお願いしまーす!」という声。「武器をこっちに向けて!」「屈んでおっぱい見せて!!」「こう、こういう格好して!(お尻を俺に向けながら)」などと言いながらシャッターを押しまくる男達。
俺も鬼ではないので、軽くポーズなどを取りながら連中の写真の中に収まってあげた。
さぁ、さっさとどっかに行ってくれ、ユウカさんよぉ。
しかし、ユウカもナノカもメイも、さっきまでの談笑はどこに言ったのか無言でぽかんと口をあけて俺のほうを見ている。な、なんだ?バレた?いや、俺がドロイドバスターである事はバレてないはず…。
俺は周囲の雑音の中で心を研ぎ澄ませてユウカ達が何を話しているのかを集中して聞こうとした。この聴覚なら埃が舞い降りる音すらも聞き分けることができるのだ!
「に、似てないわ!今まで見た中で一番似てるけど、でも本人はもっとカッコイイんですもの!」
などと悔しそうに言ってるユウカ。いや、俺、本人なんですが。本人なのに本人に似てないって事?本人より似てるのは本人以外にいるという事?そんなわけないじゃん。
「に、似てますわ!悔しいけどそっくりですわ…抱きつきたい。跳びかかりたい。押し倒して唇を奪いたい…でも、おねえさまへの一途な思いを捨て去ってこんな見も知らないコスプレイヤーに捧げてしまうのは浮気ですわ…あぁ、わたくし、邪悪な女…」
そうそう、それが普通の反応なんだよ。メイの反応が一番良いね。ユウカは何を意地はってんだか。
「あれがもし本当に本物のドロイドバスターキミカだとしたら、それを確かめるには見た目だけじゃなくて匂いとか、さわり心地だとか、味とか…あぁぁぁぁ!そうだよね!そうだよね!本人かどうかを語るためにはそこまで追い求めなきゃいけないのよね。抱きしめて押し倒して私を跳ね除けようとしたらバックに回って後ろから耳たぶを軽くかじったりとかおっぱいを揉んだりとか乳首をt」
あぁ、雑音が入ってきた。
とりあえずナノカの反応は異常っと…。
しかしそれにしても、メイとナノカは別にしてユウカはいつまで俺の前に居るんだよ。さっさとどっかに行ってくれよ…まずお前が「あーあ。似てないから他に行きましょ、うざー」とか言う役だろうが。何率先してジロジロと俺のほうを見てるんだよ。と、俺はユウカをジッと見つめて(睨んで)様子を見た。
するとユウカは突然驚いて俺から目をそらした。
顔が真っ赤だ。
コイツ、レズに目覚めたのか?
しかしそれにしてもさっきからパシャパシャとシャッター音がうるさいな。このアキバホコテンでは女の子はスカートの中身までカメラを突っ込まれてパンツを写真に収められてしまってもそれをやった奴は犯罪に問われないのか?広島やら福岡のアニメ街ホコテンでやったらすぐに警察の御用になるか周囲の一般人に取り押さえられてボコボコにされるぞ。
と、俺は調子に乗っているカメラ小僧どもを黙らせる為に、グラビティブレードを引っ張り出して(0.0001秒)カメラ小僧どもの持っているカメラを全て叩き斬って(0.0012秒)グラビティーブレードを納めた。(0.0001秒)
人間の動体視力では俺の太刀筋は見えない。
あっというまにカメラ小僧どものカメラは真っ二つ、または真っ三つに切り裂かれて地面に乾いた音を立てて転げ落ちる。
「うわあああああああ!!!僕のフルカラーのホログラム投影機能付きアザート128ビットプロセッサ高感度カメラ(望遠機能と光学認識MPU付き)が真っ二つにぃぃぃぃぃぃ!!!」「あああああああああああああああああああ!!!!拙者が昨日数少ない有給休暇を使ってはるばる広島の『カメラの第一電機』10周年記念セール全品25%オフセールでクーポンとダイイチカード(5年間会員ありがとうポイント278ポイント)使って、会社の雑費をうまく口実付けて買ったカメラが真っ二つにぃぃぃぃぃぃ!!!」「ふひひひひーッ!!!おいらのカメラはメモリの部分が価値があって実は中には今までしこたまため込んでた小学生のプールでの遊泳シーンをプールの中に仕掛けてあるカメラで盗聴したものがあって、それをバックアップとるの忘れてて今そのメモリチップが真っ二つにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
説明いいから…。
また詰まらぬモノを斬ってしまった。
俺は輝く瞳で俺のほうから視線を外さないユウカ、ナノカ、メイの三人及び、俺が切断したカメラの破片を必死に拾っている男達を後ろに、コンビニに向かう道を進んでいった。