35 シークレット・ミッション 6

完全にオワタ。
ミッションフェイル。
この抱き枕を持ってユウカ達と歩くほどの精神力はない。これから俺は抱き枕のキミカちゃん、抱きミカちゃんとか呼ばれて日陰者として過ごさなければならなくなるのなら、いっそケイスケを始末して無かった事にしたい。
「コンビニで郵送してもらえますよ?」
「え!!」
便利だな!便利な世界だな!コンビニ最高!
と、そこで早速俺は店を出て近くのコンビニを探そうと思ったわけだ。
だがすぐさま店の中に引き返した。心臓が破裂しそうなほどに動いている。今とんでもないものを見てしまった。ここに居るはずのない人達だ。
なんでユウカ達がここにいるねん…。
ユウカ、ナノカ、メイの3人は楽しそうに歩行者天国の中にいるロボット芸人のまわりに居て談笑している。あぁ、楽しそうダナァ…。俺は一人抱き枕を抱えてどのようにして恥ずかしさに耐えながらコンビニ内で郵送の手続きを行うのか頭にシュミレートを何度も繰り返しているというのに。
店内を一周して再び外を覗く。
まだ居る。
また店内を一周、さりげなく少女漫画などをちょっと読んだりしながら、「ふむ、なるほど〜」などと難しい本でも読んで人生の意味とは何かを考えている哲学者みたいな顔になったりもしながら、再び外を覗く。
まだ居る!!
「あぁぁぁぁ…もう、どっか行ってよぉぉ!!」
と、俺は無意識のうちに店の窓ガラスにギリギリと爪を立てた。
こういう時にどうするべきか?
まずは、連中の興味をそらさせて別の場所へと移動させる…これは無理だ。奴らの興味があの大道芸人ロボットから離れるのを俺がここから制御できるはずがない。次に、変装して通り過ぎるというちょっと子供っぽい作戦もある。しかし変装グッズが無い。コスプレのアイテムが売っているような気もしたんだけど。
イデア搾り出してもやっぱり店の中から奴らを狙撃して死んでいるうちに通り過ぎるしか…いやいや、なんていう危ない事を考えているんだ。考えろ考えるんだ!何か他にあるはず。
ん?まてよ…。変装グッズは無いけど、変身ならできるよ!
と、俺は店内の1階のトイレへと飛び込んでさっそくドロイドバスターへと変身した。ドロイドバスターがドロイドバスターの抱き枕を持って街を闊歩する。絵になるねぇ…。こころなしかこのクソ重たかった抱き枕も軽く感じる。まぁ変身したからなんだけどね。
このアキバではコスプレイヤーなる人々がいるらしい。さっき俺もドロイドバスターキミカのコスプレをしてた人を見つけた。似てなかったけど。つまり、俺がここで変身して街中を闊歩しても誰も驚かないのだ。ちょっと本人によく似てるコスプレイヤーがいるよね、っていうぐらいで。
そしてトイレから出て、客や店員の視線を一斉に集めながら…。
あれ?異様に視線を集めてないかな?
まぁいいや、俺はそのまま店の入口を飛び出した。