35 シークレット・ミッション 3

2階にようやくたどり着いた。
思ったより時間が掛かったのは途中で精神を揺さぶるようなインパクトを感じ取れる物を多く見つけてしまったからだ。途中の階段のあたりから、既にその先にどんなものが待ち構えているのかわかる。ポスター類はどんどん卑猥なものへと変わっていき、BGMなんてのは既に電波を感じ取れるほどのレベル。2階にあがりきるとそこに広がるのはアニメアニメアニメ。エッチなアニメのホログラム映像オンパレード。
3次元の空間に居ながらも2次元の世界に強制的に置き換えられている。(ホログラムは3次元映像なのに、何故か2次元映像として見えてしまうのも不思議だ)
ガリガリに痩せた店員はコホンコホンと乾いた咳をする。ボサボサに伸ばした長い髪は女みたいだ。いや、よくみたら胸が全然なくて男の子みたいな女の子だった。
客は全員真っ黒に統一されたお揃いの衣装を…あぁ、よくみたら普段着なんだけど黒で統一されているので同じ作業着を着ているものだと思ってしまった。そして俺は思わず近くにいた巨体の男に「あ、ケイスケ!」と叫びそうになったのを喉の奥のほうで止めた。巨体で上半身・下半身真っ黒の服を着て汗を掻いてデブだったらもうケイスケの出来上がりじゃん。
そのケイスケのドッペルゲンガーみたいなのが一人通るので精一杯の通路を、嫌がらせのような巨大なリュックを背負って歩いている。
このリュックが商品を倒して、壁も壊し、人も弾き飛ばすのではないかと冷々してしまったよ。それにしてもあの中身はなんなんだろ?生命維持装置でも入っているのだろうか…。
などと考えていると俺の背中にその生命維持装置を担いだ男が通る。そして案の定、生命維持装置が俺の肩をかすめ、俺は力なく床に倒れた。そこに手を差し伸ばし「お嬢さん、大丈夫ですか?(ニカッ」っとくるのならまだ俺もこの店の客に良識があるものだと認めよう…残念ながらその生命維持装置を担いだ男は倒れた俺を見て「フヒヒッ」と気味の悪い笑みを浮かべてそそくさと去っていくだけだった。
「フヒヒッ」である。
「フヒヒ…」
この言葉にはどんな意味があるのか、小一時間考えてしまうほどに理不尽な行動である…ごめんなさいは言えないのかよ…。
俺は店の一つしかない入口に仁王立ちになって店内に向けて機銃掃射したくなる衝動を押さえてさっさとお使いを済ませて帰ることにした。
「ッしゃぃッっせーッ」
え?えと…いまなんて…。しゃらくせぇ?いや、きっと店員の今の言葉は何かの挨拶だ。よし、さっさと商品引換券であるバーコード付きの紙を渡そう。
「…」
店員は無言でその紙を受け取るとカーテンで区切られたカウンター裏の倉庫?らしきところに入っていく。そしてがさごそと音を立てたああと、ビニール袋に入ったソレを持ってきた…。
えっと…。
俺の目が節穴でなければ、ビニール袋に入ったそれは俺の身長とほぼ同じぐらいで長さで太さも俺と同じ、そしてソーセージのような形をしているソレには2次元のアニメキャラの絵が貼りついている。俺の目が節穴でなければそれはどう考えてもドロイドバスター・キミカをアニメ化したような…つまり、抱き枕という奴だった…。