35 シークレット・ミッション 2

ホテルを出た俺は尾行が無いことを確認して人混みに消えた。
ケイスケの言うグッズはアキバならどこの『アニメショップ』でも扱っているらしい。と言っても、アキバにそういう店が隙間なく埋まっているのはあくまで幻想であり、都市伝説であり、実はさっき俺達が居たホテルのようなものもあり、そしてコンピュータやらドロイド関係の部品を扱っている店が殆ど。
歩行者天国となっている路上ではアニメの中の格好を無理やり3次元の世界に引っ張り出してとっても違和感がある人達が注目を浴びていた。あれがホコテンパフォーマンスって奴なのか…田舎者には理解し難い。祭りで不良達が改造車を集めて屯(たむろ)してるのと同じじゃないか。
他にも自作のドロイドに芸をさせてる人達もいる。
さすがパフォーマンス重視のドロイド。まるでハリウッド映画の中で登場するメカのように一つ一つのモーションがカッコイイ。でもこんな派手なモーションをしてると敵に集中砲火を喰らうだろうから実に不効率だなー。アメリカ軍と戦った時には日本産ドロイドとほぼ同じで忍者のように人目につかないような地味な動き方をする。
さて、こんなところで時間を潰しているわけにも行かない。早くミッションをコンプリートしてユウカ達と合流して、その後にでもじっくり見ればいいし。
俺は適当なアニメショップにズンズンと入っていった。
アニメショップの中は本が湿ったようなちょっと嫌な臭いがして、BGMも何かのアニメソング(有名どころではない)が流れている。3階建ての本屋のような感じで一階は一般人が見ても普通の本屋と思えるような感じ。でも店の奥には2階へと上がる意外と狭い通路があって、それがまるで異界への入り口のように小さく、そして確実に存在感を主張していた。だって壁に沢山貼られているちょっとアレな張り紙があるんだもの…あれはなんなの…。
俺はあたかも「私は普通のお客さんなんですが、なんだかふらふらーっと興味があって細い2階へと続く階段はなんなのかなー?」という感じでふらふらーっとさりげなく2階へと上がる階段の前に来た。
俺が住んでいる小さな田舎町にも風俗関係のお店はある。もちろん、入ったことはないけど入り口には女の子のポスターなんかが貼ってある。まるでそれを連想させるように、アニメに出てくる女の子のポスターがびっしりと貼ってあって、あたかもご指名お願いしますと言わんばかりである…。
と、そこで俺が2階へと上がろか、上がるまいかしているのをチラッと見ながら通りすぎていく全身真っ黒の衣装で包んだ男。目が合った時「ん?君はこんなところで何をしているの?」とでも言いたそうな顔をしていた…。
何をしてるって、そりゃぁ…恥ずかしいグッズを買いにきたのですよ…。
ため息をついて、その男の後をついて2階へと上がった。