34 通りすがりの… 5

俺は気絶したメイを抱き抱えると、その血生臭い現場から離れた。さきほどイチが刀で開けた穴を通って。
しばらく歩いて行くとようやくメイが目を覚ました。
俺の顔を見るなり、
「はッ!ドロイドバスターキミカ様!!」
と驚きの顔で見てくる。
俺は変身はしてないはず…。
「寝ぼけてる?」
「ああぁぅ、寝ぼけていたようですわ…」
どうして勘違いを…あ!!
俺はさっきからグラビティコントロールを使ってメイの身体をお姫様だっこしてたんだ。女の子が自分と身長同じぐらいある女の子を軽々とお姫様だっこできるはずがない。俺は慌てて力を緩めた。メイの身体は突然地球の重力に従うようになって腰から床に落ちそうになったので、なんとか片方の足だけは掴んだ。
「ひぃぃぃぃぃ!!」
メイが叫んだ。
俺がメイの片方の足だけを掴んでいたので大股開きでパンツ全開にしてしまったのだ。
「ごめんごめん」
「お、おねえさま、今、思いっきりお姫様だっこしていませんでした?」
「え?気のせいだよ〜」
「気のせいではありませんわ!!」
メイの瞳は怪しい輝きを放って俺のほうを睨んでいた。
「あたしでもびっくりしちゃったぐらいに力が出たんだよ、ほら火事場の馬鹿力って奴?逃げてきたからさ」
「そ、そうなんですの…。そういえば、さっきわたくし、とんでもないシーンを目撃したような気がしますわ」
「え?」
「クビがぽーん!と吹っ飛んでサッカーボールのように地面をはねたような…あれはサッカーボールなんですの?」
「…まぁ、世界は広いし沢山人が住んでるからね、一人ぐらいは頭がサッカーボールの人もいるよ」
「んまぁ…侮れませんわね、世界」
などとバカな会話をしながら、俺達は待ち合わせの場所に向かった。
ユウカとナノカには散々、強盗に襲われたときの事を聞かれたが、メイは気絶していて答えられない、俺は気がついたらメイをだっこして逃げてたという事にしておいた。女の子に話すような内容の事じゃないし。クビがポーンと飛んで血しぶきが上がって今まで生きていた強盗達が肉塊へと変わった…あぁ、今日は悪夢を見そうだ。
それにしても、強盗の行動を把握していたのか。イチは。でもあの様子だと買い物をしていた時にたまたま通りかかったようにも思える。
「おねえさま…」
「ん?」
「さっきはありがとうございますわ」
「いえいえ…何もしてないよ」
強盗達を殺したのはイチだしね。
「そんな事はありませんわ。わたくしの側にいてくださったじゃありませんの…一番辛い時に一番大切な人と一緒にいれる…それだけで十分に助けになっていますのよ」
「そ、そう?」
「そうですわ…おねえさまはお強いからそんな気持ちにはならないと思いますけど…」などと言って、メイは俺の顔を見て顔を赤らめ、目を逸らして、また俺の顔を見て顔を赤らめた。