34 通りすがりの… 1

「お姉さま!どこか行きたいところあります?」
「行きたいところ?えーっと、ゲーs」
「宝石店行きましょ!ジュエリーショップですわ!お姉さまに似合うのは宝石ですわ!でもお姉さまの美しさにはどんな宝石もその輝きを失ってしまうのですけども…ふふふ」
ゲーセンいきたーい!
俺とメイは俺達の住んでいる県にもあるジュエリーショップの東京本店にいた。
さすがに本店だけはある。宝石を売るだけじゃなくて加工してくれる場所もあるのだ。専門の技師が客の前で宝石とそれを添え付ける金具などを目の前で加工している。こういうところに来てるのは金持ちだけだと相場は決まっていると思っていたら、意外にも女子高生などお金を持っていなさそうな人達がただ見に来ていたりもする。日本人だけでもないらしく、髪の色が違う国の人達やら、髪の色が同じだけど話している言葉が違う人達やら…。
そういえば俺とユウカが一緒にショッピングに行ったときもジュエリーショップに行ったっけ。あの時も強盗に襲われてさ、
と、思っていた瞬間、
警報が鳴り響いた。
「なな、なに?」
「なんですの?」
メイが身体に緊張を走らせて俺の腕にしがみついてくるのがわかる。
そこで初めて店員が銃で脅されているのを見た。
「強盗…」
とっさに俺はメイと共に伏せる。
「お、お、お、お姉さま、どうしましょう、あわわわわ…」
さっき中国語で話していたのは強盗だったのかよ。なんで2回もそういうパターンに遭遇すんの…。っていうか、またスカーレット?ここ東京だぞ?俺について回ってるのかよ?
何やら中国語で話している中でも奴らの緊張みたいなのが伝わってきた。予定通りに進んでいないように見える。店員は宝石類をバッグに詰めているけども、その数名の中国人らしき連中は廊下のほうを見て叫んでいる。
俺は奴らが見ているほうに何があるのか見てみた。シャッターだ。よくわかんないけど、シャッターが降りて誰も入れないようになっているし、誰も出れない。これは防犯なのか?火災とかでこれ以上広がらないようにする扉のようにも見える。
「まずいな…」
「ど、ど、ど」
「防犯なのかわかんないけど、廊下のほうがシャッター降りてる」
「に、逃げれませんの?」
「う…うん」
「あぁぁ、神様、仏様、キミカ様、どうかわたくしをお助けくださいまし…うぅぅ」
ガタガタ震えながらもメイは俺の首に手を回してきて抱きついてくる。
「ちょっと、やめてってば、こんな時に」
クソッ…ここで変身して一気に片付けたいところだけど、メイがいるからな。こいつに正体がバレるのもアレだし…。まぁ、いざとなれば武器リストから刀を引っ張り出して斬り殺す事もできる。幸いにも誰も死んでいないらしい。警察に任せるか。