31 キャットファイト 7

にぃぁの足を切断したと同時に、周囲に重力波を感じた。
俺を待ち構えていたかの様に、周囲のアスファルトはあんぐりと口をあけて俺を噛み殺そうとしてきた。一瞬でそこから飛び出す俺。アスファルトは惜しくも俺をかみ殺せず、にぃぁを包みこんで消えた。
「殺った?」
俺はゆっくりと地上に降り立った。
周囲は爆撃でも受けたかのように地面は捲り上げられ、電信柱は倒れ、車は穴だらけになっていた。
その次の瞬間、地面はまるでマグマでも噴出する火山の噴火のようにコンクリートの雨を吹き散らした。中から何が現れたのかは言うまでもなかった。にぃぁだ。
尻尾が既に5本…。足はグラビティコントロールで引き寄せて、俺と同じ様に修復していたのだ…。冷酷で表情一つ変えない顔だったはずが、今はまるで鬼の形相のようになっている。まさに妖怪…。
「かかってきな!」
俺は奴に向かって腕を付きだすと、指先を俺のほうにクイックイッと動かして挑発した。
にぃぁは身体を前に倒した。
次の瞬間、奴の身体は俺の間近に来ている。
速い!!
右ストレート、回避、左フック、回避、しっぽによる払い、回避。俺は宙に身体を半回転させると、にぃぁの肩に手を掛けて引き寄せる。俺の腹を目がけてにぃぁのパンチが飛んで来るのをギリギリで交わして、まるでにぃぁの腕の上を転げるように回避する。これが重力無視のキミカ流心眼道だ!
だが奴もまるで背中に目があるかのように、後ろに回った俺の懐に肘鉄を食らわそうとする。それを蹴りで回避。身体のバランスが崩れたところで居合い斬りを行う。寸前でにぃぁは爪で刀を弾いた。
にぃぁの視線が下に落ちる。
くる!
地面が捲りがって、中から蛇が顔を出した。そのまま俺の足を縛り上げる。このバランスの崩れた状態で刀を抜くべきじゃなかった…。俺は蛇を切り刻んでやろうと刀を抜いたが、にぃぁのボディブローはそれよりも早かったのだ。
刀を残して俺の身体は後方へと吹き飛んだ。それから何か、鉄の中にめり込んだ気がした。激しく動く鉄だ。顔を上げると、そこには女子高生のスカートと、その中から覗くパンティーが沢山。
バスの中に突っ込んだみたいだ…。
俺が突っ込んだ衝撃でバスは横転直前まで言って道路の真中で停止、そしてバスが停止したせいで車の流れが堰き止められる。
動きが止まった。
「あ、どうも…」
俺はパンツに挨拶した。
「あ!キミカじゃん!キミカ!ドロイドバスターキミカだ!」
どうやらバスの乗客は無事みたいだ。地面から顔を現した俺の周りに女子高生が黄色い歓声を上げながら集まってくる。
「戦ってるの?」「握手して!」「やば、本物だ!」「サインください!」「きゃー!キミカちゃんに触っちゃった!(俺の肩とか頭を触りながら)
…。
「今ちょっと戦闘中だから」
俺はバスの車体の下に潜って、外の様子を伺った。
どうやら俺はにぃぁにボディブローを食らったまま弾き飛ばされて、高速道路を走っていたバスの横っ腹に突っ込んだらしい。
俺はプラズマライフルを取り出してにぃぁが居た位置を望遠モードで見る。
居た。
回復完了って感じじゃないか。
俺はライフルの狙いを奴に定める…。
だが、気付かれた。
この距離で?