31 キャットファイト 6

せいぜい2発ぐらいまでが限度だ。
2発。これはドロイドバスターに変身した後の俺が、動体視力で見きれるレイルガンの連射の数。たったの2発だ。そりゃそうだよ、レイルガンは発射から着弾までが超高速な為に遠距離の狙撃に適している。
考えろ。
どうやって奴の高速射出の弾を弾く?
金剛流居合術も、如月流心眼道も、相手の攻撃を見切ってはじめて効果がある。見切る…動体視力で追えないぐらいの高速の弾を見切る事が出来るのか?
『この世には様々な流れがあり、多くのものはそれぞれの流れに沿って動いているものでござる。流れを読むことが心眼道の極意。それは武道の中にだけにとどまらず』
師匠こと、海堂先輩の言葉が脳裏をよぎる。
流れを読むのなら、俺は今不利な状況に立たされている。という事だ。
逃げろっていう事か?
流れ…逃げるという流れなのか?
にぃぁは、グラビティコントロールで石を手のひらの中に納めて、俺に狙いを定めて、電磁フィールドを発生させて石を発射している。この流れは読めた。
「そうか…」
分かった。
にぃぁが高速射出した弾を俺は弾いた。
「わかったよ」
次の弾も弾く。
「流れを読んだ」
次の弾も、次も、次も弾いた。
「こういう事ですね、師匠」
次の弾も、次も、次も…俺がはじき飛ばした弾は周囲を穴だらけにしたが、俺には傷ひとつ負わせることが出来なかった。加えて言うのなら、バリアもまったく消費していない。
俺は動きがスローな時の中にいるような気分だった。
光の粒が俺に向かって飛んでくる。
俺を狙って飛んでくる。
これは超高速で見切ることは出来ない。そう、こんな高速な弾なんて見切れないのだ。でも一つだけ、見切れるものがある。…それは、にぃぁが弾(という名の石ころ)を発射する瞬間のベクトル。
超高速のスピードで一直線に飛んでくるのだから、発射する瞬間のベクトルは、すなわち、着弾点の位置を示す。
「見切った!」
俺はにぃぁの石ころによる銃弾の雨を、刀一本で弾きながらにぃぁに近づいて、足をすくい上げるように斬った。
にぃぁは目を見開いた。
奴はAIだ。恐怖や痛みはないだろう。けれど、今奴は、俺という一人の人間が自分にとって驚異になっている事を自覚したはずだ。だが、それに気付いた時は既に奴の足は切断されているのだ。