31 キャットファイト 5

崩れた壁の周囲の土や砂ホコリが少しだけ宙に浮いた後、再び地面へと落ちた。再び宙に浮いた時は瓦礫も一緒に浮いた。
中にはにぃぁの姿がある。
「本気でこなきゃ、ヤバいんじゃないの?…ふっ…」
などと強がりを言ってみせる俺。軽い挑発だ。
顔色一つ変えないにぃぁ。
ん?
尻尾が増えてる…ぞ?
にぃぁの尻尾はさっきは猫と犬と蛇の3本だった。今はそれに加えてトカゲのような尻尾が増えている。…そうか、九尾というのは最大で9本の尻尾が生えるという事か。でもなんで最初から9本生えないんだ?
そんな疑問に何かが答えるわけでもなく、答えの代わりに何かが飛んできた。俺のレイルガン並のスピードで。
素早く刀を抜き、その物体を弾き飛ばす。
石だ。
にぃぁの周囲に奴が発生させたグラビティコントロールのフィールドがあり、その影響で宙に浮いていた石が俺に高速で飛んできている?でもどうやってそんな高速に石を飛ばすんだ?
奴もレイガンの装備を持っているということか?
さらに飛んでくる。弾く。
また飛んでくる。1発刀で弾いて、2発目も同じく弾く、3発目は腕にグラビティディフレクターを発生させて傾斜角と外へ向かう力を加えて弾の軌道をずらして弾く。
その時に分かった。
奴は石ころを掌で包み込むようにグラビティコントロールで手のひらの中央に浮かばせれると、手のひらには白・蒼の閃光が光った。その次の瞬間で俺のもとへと着弾する。
ケイスケが前に話していた。ふと思い出した。
「レイルガン」は射出スピードが最も速い武器だ。どんなに遠くに離れていても加速しているので発射と同時に着弾する。これを可能にするのは弾に電圧を掛けてそれを回転させることで地場を作り出し、その地場で物体は加速していき発射されるのだ。
にぃぁは何をした?
発射の前に手で石ころを包み込むように構えた。奴は手のひらでレイルガンと同じ機能を実現できるのか!!
俺の頬の横を高速で何かが飛んでくる。壁に穴が空く。1発目は壁にめり込み、2発目は刀で弾く。3発目以降はもうマシンガンの状態だった。俺はその連射の雨から逃れるように、身体を宙に回転させ翻りながら弾を交わした。
壁が木っ端微塵になり、道路脇に停めてあった車の側面に穴が空く。タイヤもパンクして窓ガラスも吹き飛んで、フロントを穴だらけにした後、再び壁を壊しながら、俺を狙ってにぃぁのレイルガン攻撃が向かってくる。
ダメだ。逃げてばかりでは後手にまわっている。