31 キャットファイト 2

スカーレット並のパワー、侍野郎並の素早さ、忍者野郎並の意外な能力を持つもの、それが俺のこんな間近に居たのを気付かなかったとは…不覚。
そう、にぃぁだ。
にぃぁはケイスケ曰くアンドロイドらしい。にぃぁについて分かっている事といえば、猫耳に猫の尻尾、人間の言葉は話す事があまり出来ず、2足、または4足歩行をして、エサは手足を使わず口だけで食べる。
…という女子高生だという事ぐらい。
「おーい、にぃぁ〜」
なんて言えばいいんだろうか。武術の練習をしましょう?っていうか言葉が通じないんだよな…。にぃぁっていうのが自分の名前である事ぐらいしかわかってないみたいだ。振り向いたけど何かをするわけでもなく、また庭の日向のほうで寝転がっている。
どうすりゃ戦ってくれるのか。
考えろ…考えるんだ…。
つまり、にぃぁに本気を出させる方法。
以前俺が奴と戦った時は奴はビビって逃げてしまった。
つまり攻撃を仕掛けても奴は本気を出さない…。ではどうしようか。奴が興味を持つのは…。エサ?
そうだ。
「にぃぁ〜。エサの時間だよ〜」
俺はにぃぁが普段食べてる猫まんま(俺やケイスケや妹さんが残した焼き魚とご飯を味噌汁とごっちゃにしたもの)を用意し、縁側に置いた。にぃぁはすぐにやってきて猫まんまに顔を突っ込んでもぐもぐしている。
「にぃぃぃぁぁぁぁぁん」
と嬉しそうな顔になる。ほんと、女子高生である事を除けば普通に猫なのだ。猫なら可愛いだろうに…女子高生がエサ皿に顔突っ込んで飯食ってるなんて近所の人に見られたら警察に通報されるぞ…。
と、そこで、俺は、にぃぁが食べているメインディッシュの骨付き魚をすっと奪い、その肉が残っているところを全部綺麗に食った。
「うま!うま!うまーい!!!(ホントはあんまり美味しくないんだけど…こんな骨にこびりついたような肉じゃ物足りなくて…)」
そして骨だけになった魚をにぃぁの食べてるエサ皿に放り込んだ。
「に…にぃぃぁぁぁ…ん」
にぃぁは見ている俺が涙が出そうになるほど寂しくその骨をぺろぺろぺろぺろ舐めている。もう肉が全然こびりついてないそれを…。そして…俺の予測した通り、奴は本気になった…。
「にぃぅぅぅ…ぅぅぅ…ウーッ!ウーッ!!!フーッ!!!がるるるるるるるる…」
そのにぃぁの怒りの矛先は確実に、無慈悲なまでにエサを横取りした俺へと向けられていた。