30 リア充記念日 2

登校中に女子高生2名が突然抱き合っているという光景は周囲の目にも止まるが、誰もその2名の空間を壊そうとする者はおらず、ただただ、関わり合いになりたくないという顔で通りすぎていく。
そんな中で俺の頭にバンッと衝撃が走る。
「朝から何やってんのよ」
…この声は、
「何すんだよ、ビッチ」
「ビッチじゃないわ!あんたこそレズビアンじゃないの。後輩に変な世界を教えないで、お願いだからさ」
「あーん!先輩!もう少し強く押してくれたらまたキミカお姉さまとキス出来たのに!!」
ビッチことユウカは「ゲェーッ」ってジェスチャーをしてから、「迂闊に押さないようにするわ…またキスさせたら気持ちの悪い展開になるし」と言ってすたすたと校内に入っていく。もう結構ギリギリの時間なのか。
「お姉さま、ここでお別れですわ…お姉さまを理由にして遅刻なんてしてしまったらお姉さまに悪いから、メイは別れを耐えて今日という日を乗り越えますの、ごきげんよう
「ああ、うん、ごきげんよう
何はともあれ、俺はホクホク顔で下駄箱に向かう。
下駄箱を開ける。
下駄箱を閉じる。
あれ?これ俺の下駄箱?別の人のかな…梱包されたプレゼントらしきものが沢山入ってるんだけど…。
もう一度、下駄箱を開ける。
もう一度、下駄箱を閉じる。
やっぱり俺の下駄箱だ。っていう事は、こ、これは…。
「どうしちゃったんだよ、これはハーレムエンドフラグかぁ?」
などと独り言をブツブツとつぶやきながら、ホクホク顔で再び下駄箱を開けて、今度はプレゼントをバッグのなかに詰める。
それにしても一体何が起きているんだろう?
メイは俺の事を尊敬してるっていうか、好きっていうか、性的な対象として見てるらしいから別として、下駄箱のプレゼントはなんだろう?俺のファンは人知れず静かに、そして確実に広がっているということだろうか?でも俺がドロイドバスターだっていう事は誰も知らないはずだから、ドロイドバスターと顔は同じだけど髪の色とか目の色が微妙に違う女の子だからという理由でチョコをプレゼントしたという事になる。「ドロイドバスターにそっくりなキミカさん(名前も同じ)に憧れています、付き合ってください!」っていう事なのか。いやぁ、女って見た目を結構意識する動物だしなー。
「うへへへへ…」
気がつかないうちにニヘラニヘラしながら廊下を歩いていた。まずいまずい。女の子が好むのはこんな力の抜けた顔じゃない。
「(キリッ)」
戦闘中の様に顔を引き締めて歩いた。