27 日本海の死闘 6

俺は静かに目を閉じて、お腹の辺りに黒い塊をイメージする。
そうだ。…この至近距離でグラビトロン砲を喰らったらどうなるかな?
奴が気付く前に…発射準備を終えてくれ!
奴は俺を掴んでいる自分の手にプラズマシールドによる邪魔が入っているのに最初は注視していたが、すぐに俺が次の攻撃を仕掛けようとしている事に気付いた。
「風遁!鎌威太刀!!」
奴が周囲の空気を吸い込んで腹をふくらませ、忍術を発動するのとほぼ同時に俺のグラビトロン砲が奴に向かって飛んだ!ゼロ距離射程だ!
周囲の水と氷と雪が俺の放ったマイクロブラックホールに向かって吸い込まれていく。その吸引力に巻き込まれてしまえばいいものを奴は寸前で交わした。風遁の忍術は失敗した。そして、奴の回避しそこねた左腕が凄まじい音を立ててマイクロブラックホールに吸い込まれていく。
「ぐああああ!!」
左腕を失った奴は背後に飛び退いた。
「その状態じゃ印は結べないよね?」
「ちぃッ…おなごと思って油断したか…」
と、悔しそうにしているはず…なのに、奴はニヤリと笑った。ような気がした。殺気だ。
俺は素早く武器リストからグラビティブレードを引っ張り出すと背中側に縦に構えた。氷に綺麗な線が入ったと思うと、俺の刀に衝撃が走る。侍野郎の刀だ。奴の刀は動きが早すぎて、まるで刀で氷を切っていないのに氷が切れてその切断の衝撃が俺まで届くような、そんな感じだ。
「あたしも忍術使えるよ!」
俺は氷の上を後方へと滑りながら、グラビティコントロールで衝撃を氷に与える。表面だけ。そしてガラスのように粉々になった氷を宙へと持ち上げると、それらの破片全てを侍野郎に向けて放った。さっきは速射砲の弾を刀で弾いていた奴だが、さすがに今度は弾き返せないと思ったのか、一瞬抜刀したと思うと、地面が避けて、そこに足で蹴りを入れる侍野郎。するとまるで畳が持ち上がるように氷の壁が浮き上がって俺の攻撃を避けた。
「おいおい…マジで…」
さっきは一人が難民のところに向かっていった。だが今は2対1だ。女の子相手に2対1とか「おなごが」云々言えないじゃん?などと考えていると、氷の壁が何らかの衝撃で吹き飛んだ。それはすぐにわかった。巡視艇からの攻撃だ。侍野郎はあっさりとその弾丸を弾く。
「イチどの。ワシは巡視艇のほうを沈める。おなごの相手は任せた」
この侍野郎は『イチ』という名前らしい。巡視艇を沈める?クソ…やばくなってきたじゃんよ?