27 日本海の死闘 5

忍者野郎の攻撃を避けるために背後に下がる俺。それを追いつめていく忍者野郎。背後には土遁のなんとかっていう術?のようなもので氷の壁を作られて自由に動けない。
このやり取りの間、俺はバリアの回復だけを待っていた。もう一撃、忍者野郎の術を喰らったら確実にアウトだからだ。こいつの術はあの印?というのかな、仏教やらでお釈迦様が坐禅を組んでいて、手の平と指を使って形をつくる、アレを次から次への変えて、一つの意味を成すらしい。そして術が発動する前には奴の穴が空いた掌の穴の部分が、それぞれの術に対応した色になる。さっきの水遁の術は白、土遁の術は黒だった。という事は、こいつは印を邪魔されたら術が発動出来ないはずだ。
俺は奴の攻撃を辛うじて交わすような素振りを見せて、意図的に隙を作る。そして奴は案の定、俺と「近くもなく遠くもない」距離にいるときに、術を発動してきた。
「火遁!修羅れn」
術を最後まで言い終わる前に奴の腕を蹴り上げる。へへ…ヒーローにあるまじき必殺技邪魔攻撃だ。
だが奴は怯むこと無く次の体術を繰り広げてくる。俺の手前で反転すると、右手を弾き、左腕を弾き、無防備になった俺の懐に蹴りを入れる。俺は自分の身体が後方に吹っ飛んだのが自分でも分かった。案の定、氷の壁に叩きつけられる。
体勢を整えようとした時、奴の腕が氷と雪の飛沫の中からぬっと現れ、俺の喉元を掴んだ。そのまま氷に叩きつける。
「ここは貴様のようなおなごが来るところではない!」
不気味な鬼の面の下から地を這うような声が聞こえる。
「こんな事して、何が狙いなの?」
俺も声を振り絞る。その声の中に恐怖の感情を示すことがないように気をつけながら。
「知ったことよ!不法入国者どもを警察の手を煩わせる前に始末する!」
不法入国者…。あの難民の事か。
俺は氷と氷の隙間から難民の乗る船がどうなっているか確認した。船は氷の上にのし上がっている。あと何隻か他にもある、そのうちの一つだ。さっきは定員オーバーじゃないかっていうぐらいに沢山乗っていた船…みんな海に逃げ出したのか…?
違う。
船の周りには血しぶきがある。死体がある。そして船の上には、さっき俺と一戦交えた侍野郎が立っている。返り血を浴びて。
こいつらが殺したのか…!
「…あんた達はただの人殺しだよ」
「ハハハッ!人殺し!それは結構だな!…貴様はただ上辺だけをみて正義を語るだけの愚かな民の一人だ。その薄っぺらい信念の皮など、ひっぺがしてくれる!」
奴の腕が…俺の喉元を掴んでいる奴の腕が青白く光る。これは…奴の術じゃない。俺のプラズマシールドが復活している証拠だ。