26 蓮宝議員 3

話の中心にある蓮宝議員が参加している国会中継の内容は凄まじいものだったのだ。蓮宝議員が何か言う、集中攻撃を食らう、という繰り返しだ。
「必要なんですかァァ?!」
と叫ぶ蓮宝議員。
「必要に決まってるだろ!」「どこに軍隊を持たない国がある?!」「引っ込め売国議員!!」「中国にいくら貰った?!」集中砲火状態だ…軍隊は必要ないって言ってるのか。まぁ、前回、霧雨から速射砲を食らいまくったからね。
「世界から兵器が無くなれば戦争は起きません!」
「それは相手側も兵器を無くさなければ意味がないのでは?」
「日本がまず自らの武器を捨てるのです!そうすれば判ってくれます!!」
「蓮宝議員…病院に行かれたほうがいいと思いますが」というところで野次を飛ばしていた議員の間で笑い声がする。
これだけの集中砲火を受けたら普通は顔を真っ赤にして立ってすらいられなくなるだろうに、ある意味キモが座ってる人だ。
「蓮宝議員の考えられている事は、ただの希望というだけの事でしょう。希望だけじゃ政治は動かせない。戦争のない世界を誰もが望んでいるでしょうが、その手段が武器を捨てる事だとは、あまりにも浅はかだ」というわりと年齢が高そうなおじいさん議員の意見で蓮宝議員の主張は締められた。この間にも「そうだそうだ!」だとか「現実を見ていない」「頭がお花畑だ」という野次が飛んでいた。
それから次の話題に移った。
「蓮宝議員、あなたは政治の仕事のかたわら、中国の恵まれない子供達の為に募金活動をされていると聞きますが…」
「はい。それが?」
「なぜ中国だけなのか…という話は置いておくとして、」とここで「中国の手下だからだろう!」という野次。引き続いて国会の中央ホログラムにお屋敷らしき画像が表示される。広い庭に大きな英国風造りの家、門などなど。そしてそのホログラム映像に関して説明がある。
「この家に見覚えはあると思います」
「ええ。私の家ですね」
「あなたは募金活動をするかたわらで、こんな立派な家を建て、優雅な暮らしをしている。なんでも、募金で集まった金の一部を『活動費』という名目であなたの給料としている…だとか」
会場がザワザワする。
「恵まれない子供達を救うために、多くの日本人から募金という形で集金するのなら、この立派な家を売ってから、あなたがまず最初の一人になるべきではありませんか?」
ここで野次が飛びまくったけど、もう野次として聞けるレベルじゃなかった。色々な声が一斉に吹き出したような雰囲気だ。誰が何を言っているのかわからない。だけれど蓮宝議員を批判している声だという事だけはわかる。
しかし、そんな罵声の中でも蓮宝議員は涼しい顔をして立っていた。