25 アンドロイドはボーカロイドの夢を見るか 9

コンサートは途中で『予定通り』中断された。
俺は廊下を歩きながらエクステによって作られたツインテールを外して、初音ミンクのコスチュームを脱ぎながら待合室へと向かった。
待合室の扉を開くと、部屋にはミサカさん、とケイスケ、それからクリンプトン社の人と初音ミンクが居た。
「お疲れ様、無事で何よりよ」
とミサカさん。
「キミカちゃん、もう初音ミンクのコスチュームを脱いだのかにぃ…残念だにぃ」と本当に残念そうな顔をするのはケイスケだ。
「やっぱあたしのあのおっぱいの谷間アピールがファンの心に火をつけたのかな?」
「アレはダメですにぃ…初音ミンクはただでさえ胸がぺっちゃんこのキャラだから、おっぱいの谷間アピールは逆効果ですぉ」
などと談笑しながら俺は変身を解いた。
「あら、凄い。変身を特と髪の色も元に戻るのね」
変身中は俺の髪の色は漆黒と青の入り交じった色、目も同様。だが変身を解けば髪の色はクリーム色になる。これにも深い意味はないのかな?ブラックホールのエネルギーを使うから、その影響で光を吸収してしまうような色になってるのかと思った。どうやらコスチュームとかはケイスケの好みらしいし。よくわかんないな。
「それにしても…なかなか良かったですよ。初音ミンクに歌を歌わせて、ファンの人を虜にしてしまうなんて。それで今回はテロリストを逮捕出来ましたしね。お手柄ですね、ミンクちゃんは」
などとミサカさんはクリンプトン社の人に言う。
だがクリンプトン社の社員の人は首を傾げた。
そして言う。
「あの曲は初音ミンクの曲ではあるんですけど、コンサートであれを歌う予定にはなってないし、なによりまだあの曲の『アンドロイドバージョン』は作られていません…」