25 アンドロイドはボーカロイドの夢を見るか 6

作戦はこうだ。
まず俺が舞台の上に初音ミンクの姿で出る。そしたら警察のほうで会場で変な動きがないか監視して、ちょっとでも怪しい奴はたいーほ!っていう、害虫を炙り出すような手法だ。
やっぱり人前に出るのは緊張する。
俺はただ舞台の上に上がって口をパクパクと動かしてちょっと踊ったりするような感じでいいらしい。さっき初音ミンクに踊ってもらったのを見たけど、とてもあれを真似できそうにない。素人がちょっと見てメモリーの中に記録した程度の踊りで口をパクパクと動かすというレベルで本当にいいのかな?俺がファンだったら騙されたって気分になると思うよ。
いよいよだ…。
俺は震える足で薄暗い舞台を駆け上がっていった。俺が観客の視界に入った途端に凄まじい歓声が空気を動かしてお腹まで響いてきた。すぐに演奏が流れて、いつぞや聞いたことあるような初音ミンクの代表曲が流れてきて(声付き)俺は言われたとおり口をパクパクさせてその声に合わせる。
観客は前列のほうは「サクラ」らしい。というのも、もしテロを起こそうと思ってる奴がいるとすれば、初音ミンクへ危害をくわえやすい前列に座るだろうから、あえて席指定のチケットは配らずに中列〜後列に客を入れたという事だ。どおりで見た感じ前列は女性も混じって普通の(俺はオタクであるケイスケを見てるから、オタクとそうじゃない人の格好で判る)格好をした人ばかりだったのだ。
などと考えていると曲の中で歌っていない部分なのに口パクしてしまった。
やばいやばい。誤魔化す為におっぱいの谷間を魅せるように屈んで悩殺ポーズとろうとしたらケイスケやらクリンプトンのスタッフが「やめろやめろ!」とかいうジェスチャーしてきたりする。大丈夫だよ、こんだけクソうるさいなかじゃどんなポーズとろうがファンが熱狂してて、どうでもよくなってるんだよ。そういうもんでしょコンサートって、
と思っていた俺が甘かった…。
正面にプラズマシールドが弾丸を防いだ時にでる独特の5角形模様が出た!クソ!!撃ってきやがった!!おい!一般人が銃持ってますよ!警察さん!早く早く!!
「え、ちょっ、おいおい!」
さすがの俺も一発だけなら誤射かも知れない、と見逃してうたを続けようと思った。けど2発、3発と銃弾がプラズマシールドにぶち当たってエフェクトを起こす。バリアで防がれるんだから諦めろっていうんだよ!ばーか!!
ムカついた俺は今だに俺を狙って銃弾をぶち込んでくるファンに向かってあっかんべーをした。今度は2発同時にバリアに着弾。って、え?2発同時?でもバリアで防いじゃうもんねーっ!ばーか!!と、俺は今度はスカートを捲ってケツをペシペシッと叩いて、「当たんないよ、ばーか!」とマイクで歌の最中に言って挑発する。
2発、3発、5発、6発、…着弾ン!!
…一気に俺のバリアが消えた…。