25 アンドロイドはボーカロイドの夢を見るか 4

「そんなに問題があるのなら止めたらいいんじゃないの?」
と俺はふとそんな疑問をクリンプトン社の人に投げかける。
「今回のはアンドロイドメーカーや芸能関係の事務所、マスコミ…と色々関係箇所が多いので、そう簡単に中止するわけにはいかなかったんです。そこで警察の方と協力して犯人逮捕の為にこのコンサートを開いたわけです」
「へ?」
という俺の間抜けな返答に対して、警察の方、つまりはミサカさんがクリンプトン社の人に代わって言う。
「今回、キミカさんに初音ミンクに変装して歌ってもらいます、で、テロをしようとする人達を事前に警察が捕まえる、という事です」
「え?でもテロをするんでしょ?その人達。会場ごと爆発とかさせたり、」
っていう俺の疑問に、クリンプトン社の人は一枚の紙を手渡した。
そこには「初音ミンクを3次元化するというのなら、まずその初音ミンクをぶっ壊す」というメッセージが。あぁ…そういう事ね。
「『今回は』初音ミンクが標的になってるけどいつ別の標的に移るかわからないわ。そこで警察の抑止力で今後犯人になってしまいそうな候補生達を潰すの。逮捕者が出れば俺もテロってやろう、なんて考える輩はいなくなるでしょう」
などと説明するミサカさんの横で何やらケイスケが「はぁはぁ」言いながら初音ミンクの公式コスチュームらしきものを用意している。嫌な予感がする。
「こ、これはキミカちゃんが着用するにゃん。はぁはぁ…」
「ぬぅぅ…」
「ちゃんとドロイドバスターに変身した後に着なきゃダメだにぃ」
「え?戦闘コスチューム脱いだらダメじゃないっけ?」
「あれは見た目だけであんまり意味がないにゃん」
「…マジかよ」
俺はすっと立ち上がる。
するとミサカ、クリンプトン社の社員さん、それからケイスケ、初音ミンクが俺の方を見ている。期待してるような目で。
「そういえば初めて変身を見るわ」「えぇ、私も同じくです」「早く早くだにゃん!」
「変身って言ってもヒーローの変身シーンじゃないんだけどね…」
俺は頭で変身開始を思い浮かべて、次の瞬間、俺の身体は黒い炎に包まれる。そして全身から身体を回転していくように炎は巻き込んで、炎と煙が吹き飛んで消えると変身完了。
「すごいわ!変身すると髪の色と目の色が変わるのね!」「…これは、凄い…」「久しぶりのキミカちゃん登場だぉぉ(と抱きつく)」
俺はケイスケの頭を手で押しやって突き放しながら、
「それで、これでどうするの?」
「こっち!こっちで着替えるにゃん!」
俺はケイスケに言われるがままに、メイクさんやら衣装係さんもいるらしき大鏡があるメイク部屋へと向かった。