25 アンドロイドはボーカロイドの夢を見るか 3

待合室らしき場所についた。
扉を開けると一人のアイドルっぽい衣装をきた女の子が座っている。あぁ、見たことある…かな?俺が見たのは2次元のアニメキャラである初音ミンクだけど、目の前にいるのはそれをアンドロイドとして再現したような中学生だか小学生高学年ぐらいの女の子だ。
「紹介します。アンドロイドの『初音ミンク』です」
初音ミンクはちょこんと立ち上がってお辞儀をした。
「別に可愛いからいいんじゃないの?」
と俺が言う…と、ケイスケは俺の肩をひっつかんで上下左右に揺さぶりながら、「これだからリア充はダメなんですぉぉぉぉ!」と言う。
俺の視界がかなり揺れまくる。
「なんだよ、もう、離してよ『非・リ・ア・充』くん」
と俺がケイスケのおでこに手を当てて軽くデコピン。
ケイスケはおでこをさすりながら「ぬぅぅ…」と言う。
「まー、そういうのも一つの要素ね」というミサカさんに俺が、
「どういう事?」と質問。
「単純に2次元のアニメキャラだった初音ミンクが3次元のアンドロイドになる、というのを嫌う人だけじゃないの。今回のテロをしようって思ってる人達は。今まで初音ミンクが3次元になりかかった事はあった。それは初音ミンクのボーカロイド曲を真似たアーティストだとか、コスプレをした人もいるし。それは需要もあったという事でしょ。初音ミンクの3次元を期待してる人もいるって事よ。そこで今まで2次元だけのものだと思っていた人達は、3次元化した事で自分達以外のファンが出来てしまう事を嫌っているのよ」
「えーっと…つまり、どういう事なんだってばよ?」
「ふひひッ…そこは僕が説明するにゃん…。例えばキミカちゃんがドロイドバスターとして人気になっていくと、キミカちゃんのポスターを家の壁に張り巡らす奴がでたり、抱き枕を抱きしめながら寝る奴がでたり、キミカちゃんそっくりな女の子をアダルトビデオに登場させておっさんにレイプさせたりするにゃん…もしそんな事されたらどうするかっていう事だにゃん!」
「…まずはその妄想をブッ殺す」
「つまり、そういう事ね。初音ミンク2次元のファン達は彼女を神格化してて、それが別の形で世に出てしまう事を嫌うのよ。『俺達の初音ミンクを汚すな!』ってね」
「なんていうか…偶像崇拝を嫌う宗教団体みたいなアレだね…」
「そうね。形は違えど本質は同じなのかもね。宗教と」